『北岡技芳堂』 代表 北岡 淳

『北岡技芳堂』  代表     北岡 淳

―今回のTalk Relayは、前回の酒井さんからご紹介いただきました『北岡技芳堂』の代表・北岡さん!!!

よろしくお願いします。

―お願いします! では早速、そもそもな話から。北岡さんは現在、絵画や骨董品などの美術品を扱う『北岡技芳堂』の代表を務めていますが、この業界にはどのような経緯で進まれたのですか?

もともと実家がこの家業をしていましてね。私で三代目になります。幼いころから私は、祖父から父へと受け継がれてきたこの古美術商という仕事を間近で見てきました。そして気付けば、いつしか憧れを抱くようになっていましてね。それで15歳のとき、自分が三代目を継ぐことを決意し、この世界に飛び込みました。

―15歳!? となると、もうかれこれ25年のキャリアになりますね。いかがですか、実際に歩んできた美術商という道は?

いやぁ、月並みな表現かもしれませんが、実に奥が深いですね。終わりがないというか。美術品というものは、生き物みたいなもので、時代によってその価値はうごめき、変化を繰り返します。つまり、価値というものを考え、価値を生み出すことが私たちの仕事なのです。答えがあるようでない。その逆もしかり。だからこそ、この仕事は面白いんです。また、いわゆる「お宝」と呼ばれる品々を鑑定するときのワクワク感も、この美術商ならではの醍醐味ですね。

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―面白そうですね! 鑑定と聞くとぼくら一般人はあの有名な番組を連想しがちですが、実際にあの番組のように意外な人から意外な代物が出てくるってこともあるんですか?

そうですね、当店には様々なお客様がいらっしゃいますからね。資産家やお医者さんはもちろん、解体屋さんや大学生、時には路上で暮らしている方からの査定も受けることもありますので。

―路上の方からですか! それ漫画みたいな話ですね(笑)。で、持ち込まれるのが高額のお宝だったら、なおびっくりな展開ですが…。

ま、実際にはそういう極端なパターンはほとんどありませんが(笑)。しかし、一般のご家庭に出張買い取りに伺った際、査定を依頼された物とは別に、百万円以上の品が眠っていたというケースはよくある話です。

―百万円以上のお宝に気付いていなかったとは…。ひょっとしたらこの記事を読んでいる方たち全員が、自分の家を洗いざらいエグッてみたら、何かしら出てくるかもしれませんね!

可能性はあるでしょうね。

―いやらしい話ですが、今までで買い取りした最高金額はいくらですか?

3000万です。

―サンゼンマン! それって家じゃないですよね!?

もちろん(笑)。一度に数点の絵画を買い取ったとき、この金額になりました。ただ、これくらい高額になると、こちらもプロとはいえかなり緊張しますよ。

―でしょうね。もしもニセモノを掴まされたら…おそろしいですね。でも、これまで「この査定、ミスったかなぁ」って経験ありませんか?

ゼロではないですね(笑)。基本的に当店は価値のある物であれば何でも買い取るのですが、このまえ買い取った映画のポスターはちょっと失敗だったかな(※往年の邦画ポスター200枚を35万円)。言い訳になりますが、その日、熱が39度あったんですよ。正常な体調であれば、果たしてその値をつけたかどうか…。ま、その正否はいずれわかるでしょう。

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―業界ならではの、悩ましくもあり楽しみでもあるポイントですね。ところで、もともと北岡技芳堂さんは三重県四日市が地元なわけですが、新たな店を出す街に大須を選んだのはどういった理由からですか?

一番の理由は、私たちの事業を展開する場所として、基礎体力のある街だからです。大須は、コメ兵さんやジュピターさんといった、買取と販売を生業とする大手さんが成功している街であり、一般の方々には「物を売れる場所である」といったイメージも根付いています。ブランド品と美術品、扱う品のジャンルこそ違いますが、物とお金を動かすパワーが十分にあるこの街なら大丈夫だろうと考えました。

―実際に店を出して約7年が経ちますが、大須はいかがでした?

いい街だと思います。商売的にも日常的にも。下町な空気が流れていて、気さくで親切な人が多いと思います。昔ながらの街でありながらも、新しい色をフランクに受け入れる土地柄は大須の魅力のひとつだと思います。また、この街で店を構える経営者の方々の出身地は実に多彩なんですよ。なので、私自身もすんなりと馴染むことができました。

―さすが大須、懐が深い!って感じですね。ではここらで、酒井さんからの質問を。ひとつめ「家でゴハンを食べるのは週に何回?」

決まってはいませんが、必ず一回は家で食べるようにはしています。以前は付き合いもあって、今以上に外食ばかりでしたね。ひと月まるっと家で食べない、なんて場合もザラにありましたから。でも40になってからは、お酒も辞めたし、健康的な生活を送れていると思います。

―お酒はどうして辞めたんですか? ひょっとして、ドクターストップとか?

いや、自分ストップです(笑)。私も嫌いじゃなかったから、三十代のころまでは毎晩のように飲みまくっていましたよ。でも、40になるころにはもうダメ。きちんと飲んでしまうと、次の日はもう仕事にならなくて…。これまでさんざんお酒は経験したから、そろそろいいかなって。それに今は、毎日快適に仕事をして、できるだけ多くの書物を読んで知識を身に付けることの方が面白いので。

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―ぼくも見習います…。続きまして、ふたつめの質問「今後の野望を教えて!」

この商売を伸ばしていくこと。それが私の野望です。今現在、四日市と大須と京都にうちの店はあるのですが、もっとその数を増やしていきたいですね。経営者以外の目線からは、歴史に残る物と出会うことが野望です。古美術に携わる者として、やっぱり本当に良い物には興味がありますからね。

―ちなみに北岡さんが個人的に最も好きな作品はどういう物ですか?

魯山人ですね。彼ほど物の良さを自然に表現している人は、そうそういないと思います。

―なるほど、深そうですね! では最後の質問「最近買った一番高いものは何?(仕事以外で)」

昨年のクリスマス、妻にプレゼントしたエルメスのバーキンです。60万円くらいだったかな。純粋なるプレゼントというよりも、妻のマグマを静めるのが目的だったけど(笑)。

―そのマグマの原因、気になります!!

それについてはノーコメントでお願いします(笑)。

―残念!! ということで、今回のTalk Relayはここまで! 北岡さん、ありがとうございまッス!

ありがとうございました。

『北岡技芳堂』 代表 北岡 淳
北岡さんから伊藤さんへの質問
Q. 子どもは欲しいの?(何人?男?女?)
Q. 今後、どんなクルマに乗りたい?
Q. もっと、日本的なものを愛せないのですか?

プロフィール
『北岡技芳堂』
代表 北岡 淳

昭和48年生まれ。三重県四日市市出身。日本画・洋画・掛軸・茶道具・日本刀などの古美術品を扱う『北岡技芳堂』の三代目。約7年前、大須の街に新店をオープン。時代をとらえた的確な鑑定力と、現代アートから古墳時代まで、新旧入り混じる店舗展開のセンスには定評あり。