『丸長産業株式会社』 専務取締役 井谷睦

 『丸長産業株式会社』 専務取締役 井谷睦

ーでは、よろしくお願いします! まずは井谷さんのこれまでの経歴を教えて下さい。

生まれは岐阜県・岐阜市で、小さい頃からヤンチャで学校でも先生によく怒られて、廊下に立たされているような、そんな子どもでしたね。高校まで地元の岐阜にいて、大学は東京の明治大学に進学して、経営学を学んでました。

ー六大学とは高学歴…。

両親ともにいわゆるスパルタ教育だったので、受験勉強などにはうるさかったですね。卒業後に2年間、東京のレディースのアパレルメーカーで働いてました。そこは今でも取引などでお世話になっています。その2年間は、自分の中では修行のような感じで、その後は実家が営んでいる会社を親父から引き継ぐような形で今に至ります。

ーご実家がアパレルの会社なんですね?

そうですね、元々は大須やアメ村に卸すような卸問屋です。どうにも卸の方が“渋く”なってきた…まぁ、儲からないと言うことで、直営の小売店を出そうと思ってできた1号店が大須の『M-03』です。12年前2000年です。僕は、1号店を出す半年後くらいに戻って来ました。そこから、卸も店も携わる形で今まで来ています。

ー継ぐことに関しては嫌だなっていう気持ちはありませんでした?

元々、小さい頃から洋服が好きで、色々なショップで買い物をするのが好きでしたので、そういう気持ちはなかったですね。早いうちから実家の商売をやりたいなって思いがありました。兄がいるので、兄弟で継いでいる感じです。

 『丸長産業株式会社』 専務取締役 井谷睦

ー兄弟で会社を大きくしていくなんて良いですね。

兄は元々、大手企業にてシステムエンジニアとして勤めていたので、アパレル畑でなかったんですけど、少しアパレルで修行をして実家に戻って来ました。今では現場派の僕、システム・経理担当の兄、という感じでやっています。僕自身アナログなので、すごく助かっています。それぞれの特色を活かせているのでうまく会社を回せて良かったです。来年には父が会長、兄が社長、僕が専務という形になると思います。

ーどのタイミングでベントレーに乗るんですか(笑)?

う~ん、乗りたいね~(笑)。昨日も韓国からの帰りに空港でベントレーを見かけて嫁さんに、「あれ、乗りて~な! 」って言ってたとこですよ(笑)。2シーターのオープンでね! …じきに購入予定です(笑)。

ー売上好調と伺っております(笑)

“今は”ですよ(笑)。継続するのが本当に大変なんですよ。10年前と今では、やっていることが全然違う。だからこそ続いているのかなって思いますよ。当初はいわゆる“安物屋”をやっていたんですよ。すごく安値で商売をしていて、それで売上を作っていたんですけど、僕が入ってからは“良い物”を置こうって進言したり、インポートの高級ジーンズを置いたり、色々と変化をしてきてます。今は、オリジナルを扱うようになって、また変わってきて、お手頃も高い物ありのショップになっていると思います。本当に時代の変化に付いて行くっていうのは大切だと感じてますよ。

ーなるほど。トレンドを見極めつつも、経営的ビジョンも持つという。

イオンとかショッピングモールにも出店をしたりと、色々な所にアンテナを張っていたいですね。「同じ場所で変わらずに」っていう事も大切だと思いますが、変化に順応できないと、やっぱり難しいと思うから。今後は、ネット販売でもしっかり売上を立てられるようにしたいです。それと、メーカーに勤務している時や卸で色々な卸先に回らせてもらった時なんかに見て得た経験(ショップの良い点・悪い点)が、今のショップ作りにも役に立っているかなって思います。

ーどれくらいのスパン・サイクルで流れを考えていますか?

大体3年は同じ事をしていても大丈夫、通用するとは思うんですけど、4、5年になると厳しく感じると思います。同じ事をやるのはね。そうやってきて、今のところ考えてきたことは外していないですね。う~ん、ネットくらいですかね、外しているのは(笑)。まだまだ売上が少ないですから。まずは月1000万円を目指さないと。身近な知り合いのショップもネット販売で調子が良いって言う所もあるから、ウチも出来ない事はないなって思っているんですよ。

 『丸長産業株式会社』 専務取締役 井谷睦

ー実店舗は現在いくつ出店しているんですか?

名古屋・岐阜・大阪とあって、全部で11店舗ですね。京都もあったんですけど、売れないから(笑)なくしました。5000万円くらい損しましたね~(笑)。

ー5000万円! そして、笑ってらっしゃる…。そこがスゴイですね。

いやいや、スゴくはないですけど、他のお店でカバーしているからだと思います。お店ってやっぱり内装費などを償却できてから利益がスゴく出てくると思うので、大須の『M-03』でも利益を出してくれますしね。月7~800くらいはあるかと。ウチの店舗の中では真ん中より下くらいの売上なんですけど、あのスペースで考えるとまずまずだと思います。一時、大須ブームが落ち着いた時は、500くらいだったかな。

ーそれでもスゴイですよ! 他の店舗はそれ以上…何が一番の要因ですか?

やっぱり立地でしょう。大須も万松寺通りと他の通りを比べると、家賃はそんなに変わらないはずなのに、やっぱり万松寺の方が調子の良い店が多いって聞きますからね。立地は大きいと思います。お店をやるには、まずは一等地に出店をしないと。それプラス商品も良くて、スタッフも良くて、って感じじゃないですかね。パズルのようにピースをはめていかないと売上を上げるのは難しいですよね。

ーなるほど、では井谷さんの中で立地条件を満たせば、売上は出せるっていう方程式があると?

ある! 出せますね。方程式はありますよ。…他の店もそれぞれが持つ方程式はあると思いますよ(笑)。でも、やり方は真似できるし、仕入れもある程度は出来てしまう、それっぽいのは誰でもできると思います。今は市場も縮小してきてるっていうのと、メーカーから話を聞いたり、他の店の良い所を真似たりっていう店もある事で、どこも似たようになるからこそ、潰し合いになってしまってる。市場縮小に拍車をかけているっていう点もあると思います。メーカーも直営を作るし、店はオリジナルを作るって事で、また更に厳しくなりますからね。だから、“作れる店”じゃないと生き残れなくなる。

ー差別化を図るのが難しくなってきていますよね。

オリジナルや感性で勝負しないと、生き残れなくなるからね。でも、やっぱりブランドショップは強いよ。店にネームバリューがあると儲かってるよ(笑)。だから、有名店は良い所(家賃の高いテナント)に出店できるし、してる。広告にもお金を掛けられる。故に名前も商品売れる。もちろん、継続するのは簡単じゃないから、その構図を崩さないようにする企業努力は有名ブランドの宿命なんだろうけどさ。

ーそうですね。今までお話を伺っていると順調にきている感じですが、今までに挫折はありましたか?

挫折はありますよ。高校受験に失敗した事(笑)。第1志望に合格しなかったので、滑り止めに進学した事かな。…でも、成功の中に失敗もありますよ。イオンモール木曽川のキリオに出店した時はめちゃめちゃ売れたんですよ。その後にモレラにも出店して売れたから、「どこでも売れるんじゃない!? 」って、調子に乗って、千葉の方にも出店したら、大コケ(笑)。それは1年半で撤退したんですけどね。「さすがにどこでも売れるわけじゃないな」って思うし、モールの会社によって違うなって気付けたしね。いろんなモール系から「出店しませんか? 」って話が来たけれども、取捨選択をきっちりするようになったし。でも、気付かずに調子に乗ってイケイケで会社を倒産させた知り合いもいるから、失敗をする事も大事。

ーなるほど。今後はどんな展開をしていきたいですか?

当面は20店舗20億を目指しますね。今はその半分くらいなので、その倍を目指したいです。それも、あと5年後には実現させたいですね。1年くらい前から海外の工場で作るようになったので、利益率は良くなってます。よく海外の工場はハズレがあるなんて聞きますけど、僕は慎重に熟考して決めたので良かったです。知り合いから紹介してもらった所で、実績もある所なので良好ですね。

ー海外出店の計画は考えていないですか?

今のところ無いですね。なんとなくソウルやハワイに出したいなって思いますけどね(笑)。先の事はわかんないけどね。20店舗20億も上手く言ったらの話ですし、今の既存の店の売上が無くなってきたら無い話だから、本当に怖い。店舗数拡大中に既存からガタが来るってのもある話だから。

ー現在の従業員数はどれくらいですか?

バイトも含めると70人くらいかな。その内社員が30人くらい。ウチは人件費が高い、つまりお給料はそれなりに払っていると思う。それは経理にも言われてるから。だからこそ、利益率を上げないとって思ってる。

 『丸長産業株式会社』 専務取締役 井谷睦

ーなるほど。では、木野さんから頂いている3つの質問にお答え下さい! ひとつ目「ゴルフで100を切るのは、いつですか?」

ハッハ(笑)。もう年内中に…(笑)。去年の8月から始めたので、まだまだなんですけど。行けば行っただけ上手くなるんですよ、ゴルフは。僕は週に1回くらいですね。コースを周って出来が良くないと、その後にシングルプレイヤーの父からワンポイントレッスンを受けてます(笑)。兄弟共に父から譲り受けたクラブでやってますしね。

ー井谷さんの2012年のゴルフに期待します(笑)。では、ふたつ目「20店舗・20億は、いつ頃達成ですか?」先程も少し話しに出てきたので、もう少し詳しく!

来月に高松のイオンモールに出店が決まっているので、四国エリアに5、6店舗出したいですね。父が四国出身なので、その縁もあって。関西エリアにも5、6店舗いきたいですね~。大阪には1店舗ありますけど、京都は難しいので。京都の人は地元の会社しか応援してくれないから。それに見栄も張らないし、ケチだね(笑)。京都で接客した事もあるけど、どうも名古屋や他のエリアとは感触が違う。期待をさせるだけさせて、戻ってこないお客さんが多い。全国的に見たら、名古屋の方が難しいと思われがちだけど、僕にとっては名古屋の方が良い感触だな。

ー名古屋エリアはもう十分ですか?

いやいや~まだ名古屋エリアも増やしていきたいですね。それに三河エリアも気になる存在。三好店を出店したけど好感触を得てるし、来年には港にイオンモールが出来るので、そこに出店予定ですね。やっぱり狙えるエリアと立地には出店していきたいですね。

ー楽しみです! では最後です。「最近のお気に入りの“店”は、どこですか?」含みをもたせた言い方をしていました(笑)。

えーっとね、特にないけどな~。強いて挙げるなら『○○バンク』だね(笑)。ゴルフを行った帰りに行く感じかな。月に2、3回くらい。酒はあんまり呑めないんだけど、みんなで行って、ワイワイする場は好きなので、程々に行ってますね。休日はたまにパチンコやったり、犬を遊ばせにドッグランに行ったり。東海市にあるゴルフ場跡地を利用した所なんだけど、広々として気持ち良いよ。

ーセレブっぽいですね(笑)。いきなりですが、夫婦仲は良好ですか?

仲良いですよ。まだ子どもはいないけど、3~5年後には欲しいかな。一緒に犬と戯れたり、休日にドライブしたりって感じですね。昔は海外に行くのが好きで年2回はラスベガスやタイ、シンガポールなんかに行っていたけど、今では中国、韓国に仕事で2ヶ月に1回行ってるくらいだね。ぼんやりだけど、60際になったらハワイなんかで悠々自適に海外生活ってのを夢見てます(笑)。

ー理想ですね。最後に大須に対して印象・要望・提案などをお願いします。

どうしても個々のオーナーさんがやっている感じ、それぞれがそれぞれで、もちろん、それはしょうがない事なんだけど、どうもバラバラな印象があるかな、今は。せっかく大須っていう名前がある街にいるんだから、大須っていう街全体、もっと全店舗が一体となった“何か”が出来たらなっていう思いはあるかな。漠然と、全員参加の楽しい催しがあるといいなって思いますね。
『丸長産業株式会社』 専務取締役 井谷睦