『有限会社シーン』 代表取締役 木野進

『有限会社シーン』 代表 木野進

ーでは、よろしくお願いします! まずは木野さんのこれまでの経歴を教えて下さい。

生まれも育ちも静岡県藤枝市です。幼少から高校までは地元だったんですが、大学は新潟の大学に進学しました。ですが、2年で中退。そこが、まずひとつ目の人生の壁でした。“大学中退”という響きで、なかなか希望に合った就職ができなかったですね。面接でも、先方はそこが気になるようで、「なぜ辞めたんですか? 」と。

ー実際、大学中退の理由は何だったんですか?

う~ん、先が見えなかったというのと、中途半端に抱いていた自分の夢のせいでした。中途半端に「ミュージシャンになりたい! 」と思っていて、「このままココ(新潟)にいてはムリだ」と思っていたからですね。でも、今思えばすべてが中途半端だったなと、それと、何かに逃げたかったというのもあったと思います。

ー当時はもがいていたと。その後はどう進んでいったんですか?

希望の就職先にはなかなか就けなかったんですが、精密機械を扱う工場に勤めました。当時は、昼間はそこで勤め、夜は週二回、子ども向けの英語教室の講師をやったりっていうのを1年半くらい。その後、精密機械メーカーの営業に転職して、海外輸出チームに配属されたんですけど、なかなかうまくいかず…。その当時は、人生に迷いましたね。ふたつ目の壁・ターニングポイントになったんですけど、東京営業所に行くか、転職を考えて資格を取るか。営業を続けながら、「自分の武器になる資格を取ろう」と思い、通関士の国家試験を受けたんです。すると、合格できたので、迷いつつも、転職先である名古屋に行くことを決めたんです。

『有限会社シーン』 代表 木野進さん

ーなるほど、転職で名古屋に来たんですね。

24,5歳の時に、名古屋港の会社で通関士としてお世話になってました。でも、サラリーマンを数年続けてきた時に、悶々と抱いていた「俺はこのまま、サラリーマンなのか? 」という思いが大きくなっていって、ふと大須に遊びに行った時に、まだ漠然とですが、「お店を出したら面白そうだな~」と思ったんです。何を扱うとかは全然イメージしてなかったんですけどね。昔から、「雇われるよりは自分で商売をしたい」、「音楽関係の仕事をしたい」と、なんとなく思っていたのも関係していると思います。

ー大須に来たきっかけは、何だったんですか?

本当にたまたまです。当時は、土日はほぼ静岡に帰ってて、金曜夜に車で静岡に行って、月曜朝に名古屋に戻ってくる、そんな生活を何年も続けてました。名古屋に友達いなかったですから(笑)。珍しく名古屋で遊んでいた流れで、大須に行ったって感じです。あと当時は、よく海外に遊びに行ってましたね。アメリカがほとんどですけど。何が好きって、アメリカが好きなんです(笑)。文化だったり、雰囲気だったり。憧れですよね。上司に嫌われようが、有給はほとんど使ってました(笑)。

ーそこから、ようやく出店という流れですね。

そうやって、会社に勤めている時から海外(主にアメリカ)に行って、向こうにいる日本人向けのフリーペーパーだったり、色々な情報を仕入れて、フリーマーケットに赴いたりと、買い付けのようなことを軽くしていたんです。ざっくりと話すと、その延長で出店してしまおうという流れですね(笑)。当時は、インターネットも普及していなかったので、リアルショップを出店するしか道はなかった。…紆余曲折を経て、29,30歳の時に大須に店を構えました。

ー僕らは聞かせて頂きましたが、webでは“紆余曲折を経て”の部分は、省かせて頂きます(笑)。
最初から現在の『BLUE OCEAN』の場所に出店ですか?

“紆余曲折”が気になる人は、直接聞きに来て下さい(笑)。
最初に出店したのは、団子屋さんの地下が空いていて、カウンターバーがあったり、くちゃくちゃで悲惨な状況だったんですけど、現状引き渡しなら安くすると言ってもらえたので、そこに決めました。始めて1年くらいは、買い付けの延長でインポート・レディースを扱っていたんですけど、なかなか売れなかった。試行錯誤で、アクセサリーをやったりと色々したんですけど、儲けが少なかったですね。その後は、大須の街自体に人が集まるようになったのをきっかけにして、徐々に良くなっていったかな。

『有限会社シーン』 代表 木野進さん

ーレディースに注目したのは何故ですか?

単純に、メンズのお店が多かったからですね(笑)。それに、アパレルショップ・物販で働いた経験がなかったのも関係していると思う。値段の付け方はもちろん、仕入れや服の畳み方もわからなかった。大袈裟に言うと、やりながら覚えていって今に至る、って感じです。仕入れも、メーカーが分からないから、海外に行って現地で直接仕入れるというやり方。こだわりは無いです。「こだわりは? 」と聞かれたら、こだわりがないのが、こだわりですと答えますね。

ーかなり、ワイルドなやり方ですね(笑)

当時は、もう行き当たりばったりな感じですよ。ホテルも決めないまま現地に渡航したり、なにぶんひとりだったので、それで良かったんですよ。知らない方が逆に良かったのかなって今は思います。下手に知っていると、自分で答えを見つけていないのに、分かった気になってしまう。未経験者の方が、僕は良いと思う。スタッフも未経験者を多く取っていますし、比べるものが無い方が一生懸命やってくれて、会社に合った人材に育ってくれそうな気がするんですよ。

ーその後、現在の『BLUE OCEAN』の場所に移転。

その前に、今現在『JEEVAS』さんがいる公園の前に2号店を出店してるんです。やり始めて3年くらいした時ですね。で、10年くらい前に、それと1号店を合わせて閉めて、今の場所に出店しました。…ちょっと正確な年数は覚えてないんですけどね(笑)。会社にしたのも、その時期ですね。その後は、生活倉庫に出店したり、栄NOVAにも出店したりと。生活倉庫は、なくなるまで出していて、栄NOVAは、業績がちょっと良くなかったので、万松寺通に移転させました。で、2011年の11月に徳重店をオープンさせました。

ーショッピングモールに入っている徳重店の調子はどうですか?

良いですよって言うほど良くもないし、悪いですって言うほど悪くもないです(笑)。雰囲気は大須と似たような感じですね。平日は近所の方が多くて、土日祝はワーッと賑わう…。いかにして顧客さんを掴むか、っていうのは一緒だと思います。まだ、出店して日が浅いので、なんとも言えませんが。

ー現在、スタッフさんは何人いらっしゃるんですか?

10人ですね。内、社員が5人です。今年中に全員社員にするのが、目標です。良くも悪くも全員女性というのが、ウチの特徴です。女性ならではの問題が常にありますね。結婚や出産、仕事に対する姿勢が、やっぱり男性とは違う。そこをうまくやっていかないとな、っていうのが課題ですね。大袈裟な話、どうしてもスタッフのお父さん目線で見てしまいますから。

『有限会社シーン』 代表 木野進さん

ー人材育成は会社に取って大事であるし、難しい所ですよね。

そうですね。やっぱり人と人とのつながりが一番大切。全員社員にするのは、コストが掛かると思われるけど、みんなで頑張って売上げを上げようという気になるし、ひとりひとりに責任感が生まれる。個人のやる気・モチベーションUPに繋がると思うから、進めていきたいですね。会社としても社員にする事で、下からの押し上げを期待できるし、僕の刺激にもなりますからね。会社以外でも、人との繋がりが大切だなと思うのは、僕の人生の中で、“危機的な状況になった時に、誰かがいてくれた”っていうのが、大きいですね。局面局面で、キーパーソンに出会えている。

ーなるほど。では、今後のお店の展開はどのように考えていますか?

当面は、出店よりも内部育成ですね。まだまだ内部を成長させたいし、問題・課題を提起して、それを解決していくっていうことが大事だと思ってます。スタッフを見つめ直せば、お客様へも良い方向に進むと思ってます。
会社やお店に関してはそうですが、僕自身は、情報過多にならないように気を付けてます。単なるトレンドを扱うお店にはしたくないですし、雑誌や情報に踊らされないように、何にしても見極めが大事だなと感じてます。もちろん、トレンドは扱いますが“リアルを見る”、“こだわりを持たない”、“残すプライド・捨てるプライド”、この感性が衰えたら終わりだと思います。一点集中・一点豪華ではなく、必要最低限が揃うお店でありたいですね。

ーでは、大久保さんから頂いた3つの質問にお答え下さい! ひとつ目「車好きと聞いてますが、今後は“ポルポル”から、もっとアップグレードを考えていらっしゃるのですか?」

「今気になってるのは? 」って聞かれたら、日産のリーフですね。電気自動車、エコです(笑)。携帯に充電の状況とかが分かるのも良いじゃないですか~。そういった車もありなのかなって思います。プリウスは街に溢れているし、リーフはそんなに走っていないからさ。これまで色々な車に乗ってきましたけど、やっぱり飽きちゃうんですよ。今のポルシェにも飽き始めている…だから逆に乗らないようにしようかと。電車通勤や自転車通勤にしてみたりね。

ー続いてふたつ目です。「鋭い眼光で彫りの深いイケメンの木野先輩なのに、何故あんなにピンク系の服がお似合いになるのでしょうか?」

似合うというか(笑)、最近は白系、淡い系が多くなっただけですよ。昔は、柄シャツ・柄系が多かったんですけどね。そういう元々の派手好きが柄系を着なくなると、淡い中でもピンクを選んじゃうんですよ(笑)。でも、最近からですよ。ちょっとゴチャゴチャした服に飽きがきたので、今は比較的さっぱりしたモノに興味がいっています。そろそろモノトーン系にシフトチェンジするかも知れないです。

ーみっつ目の質問です! 「実家が城跡に建っていると聞いた事があるのですが、本当ですか?」

そうです、そうです。実家は、田中城という城跡に建っています。住所も田中って言って、田んぼの真ん中ですね。今住んでいる家も北区の名古屋城の近くにあるんで、なんか城に縁があるのかも(笑)。

ー本当だったんですね(笑)。では、最後に大須・お店の経営に関して木野さんの考えを教えて下さい。

さっきも少し話しましたが、人との繋がり、人への感謝の気持ちを忘れずに、一日一回は感謝して、何に関しても謙虚に、天狗なることなく生きて、お店の経営もしていかなきゃ、と思ってます。人間誰でも、日々、誰かに助けられていると思うのでね。
『有限会社シーン』 代表 木野進さん