『ZODIAC』 代表 高柳忍

『ZODIAC』 代表 高柳忍

ーでは、よろしくお願いします! まずは高柳さんのこれまでの経歴を教えて下さい。

名古屋・中川区で生まれて、3歳から蟹江ですね。だから、名古屋の記憶はあんまりないんですけどね(笑)。小中高と地元で過ごしてきて、それから今とは全然畑違いの整備士の専門学校へ進んだんですよ。そうしたら、学校は服が好きな子たちばかりで、そこで刺激を受けたかな。もちろん、小さい頃から自分も服は好きで、家族で出掛ける時は毎回おねだりして買ってもらってたくらい。

ーあっ、整備士の学校に通ってたんですね!

でも、整備士の学校が面白くなかったからやめて(笑)、18歳の時に某大手の服屋に勤め始めました。2年くらいそこに勤めましたかね。辞めた理由は、大きな会社だったので社長の顔も知らなければ、誰に対して付いて行けば良いのかも分からず、それに評価も上がらなかったので、「自分でやった方が良いんじゃないか? 」って思い始めたのがきっかけです。頑張る理由が見つかんなかったっていうのもあるかな。それから、お金を貯める為にもトラックの運転手を6年間やりましたね。

ーじゃー、満を持していよいよ開店ですか?

でも、自分一人でやれるとも、本気やろうとも思ってなかった(笑)。けど、26歳の時に蟹江で店をオープンした。最初はこんな店にしようっていう構想も特になく、ただ「服屋がやりたい! 」ってだけだった。ホントに今の店をやろうと考えている若者よりもアバウトだったと思う(笑)。ホントに適当だった…仕入先も売り値の付け方もわかんないしね。もちろん、よく行くお店だったり、友達のお店を参考にはしていたけどもね。

ーその頃はどんなお店だったんですか?

当時のセレクトは、インポートだったり、何点かオリジナルも扱ってましたよ。最初の頃は、友達や知り合いが来てくれたり、程々に盛況ではあったけど、蟹江でやっていたっていうのもあって、そんなに新規の集客は見込めてなかった。顧客さんやよく来てくれる常連さんはもちろんいたけど。ネット販売をやり始めるまでは、「ひとりで食っていく分が稼げているからいいや」って感覚だったかな。田舎が故に、駐車場に車が停まってなければ「お客さんいないけど大丈夫? 」って言われたり、飲み屋さんに行けば「お前んトコ大丈夫か? 」って具合に色々言われちゃうからね。当時は単純に悔しかったな。「何とかしたい! 」って気持ちだった。

『ZODIAC』 代表 高柳忍さん
ーそこでネット販売に目を付けたわけですね! 調子はどうでした?

ネットはね、最初から調子良かったよ。ただ、準備が大変だったけど(笑)。知識も無ければ、経験も勝算も無いわけだからね。わからんことがあれば聞いて解決って感じで進んできてる。もちろん、参考にしているお店はあるんだけど、完全に教えてもらう訳じゃないから、すごく大変。興味をもったお店のページを見て、「どうやってやっているんだろう? 」ってトコから自分流に自店のページに反映させているかな。

ーネットを始めたのはいつ頃ですか?

ネットは始めて5、6年で、移転は2年前に蟹江から大須に。移転の理由は、単純に広いトコを求めて。それもネットの影響で、ネット販売ってパワーゲームみたいなトコがあって、どれだけ在庫を持てるか、どれだけお金を突っ込めるかっていう事が大事だから、それに対応する為だね。移転前のお店は在庫の段ボールで溢れてたから(笑)。

ー大須を選んだ理由は? これは、井谷さんから頂いている質問「大須へ出店した理由は? 」と一緒なんですけど、気になるトコです。

それ、特にないんだよね(笑)。大須に移転したいって来た訳じゃない。ただ、広いトコを探してたらココが空いてたんだよ。ビル自体もできたばかりだったし、テナントもウチが初めてだったと思う。あと、路面店でガヤガヤっていうのは避けたかった。なんでかって言うと、ウチは30~50代のお客さんが多いから、ゆったり見られる様に。うん、広いトコにキレイに商品を並べたかったから、移転してきた…ホントにそれだけ。

『ZODIAC』 代表 高柳忍さんーでは、大須に移転したことでの変化は感じてますか?

もちろん、大須に来たことで新しいお客さんはすごくいっぱい増えた。元々ネットのお客さんがウチは多いんだけど、ネットからウチを知って、すぐに商品が欲しい時もあるじゃん!? そういう場合の蟹江の時は「在庫ありますか? 」って電話はスゴくあったんだけど、場所が場所だから直接お店に足を運んでってことに直結しない。でも大須の場合は、ネットを見て→在庫確認して→すぐに欲しい→ってなったら、お店に直接来てくれる。そういう大須のネームバリュー・立地の良さはすごく有りがたく感じてる

ー実店舗とは違う、ネット販売の難しさってありますよね?

やっぱり難しい(笑)。僕もまだまだ人に語れるほど詳しくもないし、成功もしていないから。でも、きちんと努力してたり、誠意を持ってやっていると、PCの画面上を見ただけで、お客さんにはわかると思うんだよ。嘘くさいっていうのは、やっぱりバレると思う。ネットで調べれば安さだけのトコもあると思うし、値段を気にして買う人はそっちに流れていくと思うけど、ウチは基本定価販売だけど、ウチを選んでくれる人もいる。そういう人には誠心誠意対応させてもらう。そういうことの積み重ねだと思う。もちろん、セレクトしている商品が時代に合っていたり、旬であったり、人の興味を引くモノであるっていうのもあると思うけど。

ーそれに付随するんですけど、井谷さんからの質問で「ネット販売での成功の秘訣は? 」っていうのを頂いているんですが、どうですか?

ウチの場合っていう限定になってしまうけど、さっき話したことと、“知恵比べ”かな。ネット上には同じ商品が沢山あるけど、知恵を絞ればその中で光り輝かせることは可能なんじゃないかな。そういう微々たる違いが、結果買う・買わないの大きな違いを生んでいるんだと思う。あとは自分やお店がどういう存在なのかっていうのを出していった方が良いと思う。僕のブログはお店のトップページよりもアクセス良いんだけど、商品説明はほとんどしていない。多くの服屋さんがやっているブログって、やっぱり商品説明が多いと思うんだよね。顔も知らない人のトコよりも、「こんな人なんだ」って思ってもらった方が絶対良いと思う。現に買ってくれた人やお店に来てくれた人から、「この間のブログ良かったですね」って言ってもらえることが多いからね。遊びやプライベートのことを書いているだけなんだけどね(笑)。

ー他に気を付けている点はありますか?

う~ん、実店舗もそうなんだけど、ネットは見えない部分をどうお客さんに伝えるかがさらに重要なんだと思う。気持ち・気遣い・気配り、いろんな言葉があると思うけど、そういうことなんだと思う。あとは、これは完全に僕の意見だけど、スタッフに任せることなく、オーナーさんが必死に考えて自分で取り組まないと成功はしないと思うな。人任せにせず、自分で、本気になってやることが大事。

ーでは、今まででガクッと落ち込んだ時や苦労した時期はいつですか?

それはね、自分がやる気なかった頃(笑)。蟹江の時、商売始めて4、5年目くらいかな。好きなことをやっていたはずなのに、全然無気力。何をして良いかわからず、どうすれば良いのかわかんなくなってた時期。その転機はやっぱりネットなんだよね。

『ZODIAC』 代表 高柳忍さん
ーとなると、一番調子が良いのは今ですか?

ううん、今じゃなくて、2年前が一番調子良かったかな。何を仕入れても売れたし、当たった時期だった。数字自体は今とも変わんないんだけど、当時のが商売的に“楽”だった。例えば「solmatesocks」がスゴく人気だった頃も流行りだす前から目を付けてたり、そういうのを当てたりすると、スゴく楽しい。いろんな流行りのモノってすぐに買ってくれるのは、関東圏の人が多いんだよね。名古屋の人はちょっと遅めに手を出す印象。そういうのが変わるようになると、もっと面白くなると思う。

ー確かに名古屋の印象はそうですよね。

そういうのも含めて、有名なお店のオーナーさんとか「もっと街に出て、いろんなモノをみよう」って言うけど、お店に行っても「在庫無いです」って状況が多いってお客さんから言われてしまうんだよね。だったら、送料無料のネット販売の方が良いじゃんってなるよね。言われない為にも、自分たちが決断して、在庫を抱えて、モノを用意してあげないと矛盾しちゃってるよって僕は言いたいかな。だから、ウチは普通のモノが普通にあるお店にしたい。

ー普通のモノを普通に…これってやっぱり難しいですよね?

うん、難しいよね。仕入れの数・スピードも重要だし、タイミングも大事。コストも掛かるし、捌かなければいけないプレッシャーもあるからね。それが、さっき話した「ネットはパワーゲーム」っていうことにつながると思う。もちろん、一点物やユニークな商品も必要だけど、買いたいと思った時に普通に買える普通の商品をしっかり揃えているお店が一番ニーズを得られるはずだと思うからさ。

ーなるほど~。では、井谷さんから高柳さんへの3つの質問の最後、「毎週錦に呑みに行っているのは本当ですか? お気に入りの“店”は? 」

これはね、蟹江の時の話だね(笑)。今は全くと言っていいほど行ってない。売れ出した社長の自然の流れだと思うけど(笑)、一時はよく行ったかな。最近はホントに付き合いで行く程度だね。ただ、“錦”限定みたいな聞き方はやらしいですね(笑)。飲み代に使うよりも趣味に使ってる方が多いな~。カメラが好きで、レンズばっかに費やしてる。

ー趣味は大事ですよね! 一眼ですか?

そう、Canon 5D MarkIII とかを使ってるんだけど、レンズもいろいろ買ったりしてる。元々ネット販売用に使い始めたんだけど、みんな素敵な写真をHP上に使ってるのを見ると、自分でももっと良い写真を載せたくなるじゃん。それが高じて趣味になっていった。作品集なんかも作りたいなって最近思ってさ、写真専用のサイトも作っちゃうおうかなと思ってます(笑)。生涯初めての趣味なんで、今後もハマっていきたいと思います。ベンツのSLKでも買って、ひとりで写真の旅にでもでようかな(笑)。

ー最後に、自分自身を含めたお店の理想形はどう考えていますか?

そうだな、自分自身があれこれ指示を出さずに、スタッフが好きなことを好きなようにできる会社を作っていきたいかな。信頼できるスタッフを増やすことも大事だし、それが一番重要だと思う。あとは無理せず現状維持かな。で、あとは結婚したいかな(笑)。
『ZODIAC』 代表 高柳忍さん