『MODECO』 代表 水野浩行

ーお願いします! では、まずは水野さんの経歴を簡単に教えてください。

大須ではないんですけど、名古屋生まれの名古屋育ちですね。でも、実家が美容商材や不動産などを大須で営んでいる関係もあって、幼少の頃から馴染みはありましたね。早生まれですけど、学年で言えば今年(2011)27歳の学年です。僕らの世代がちょうど中学生の頃くらいって大須の古着人気がスゴかったので、バッチリ大須に買い物に来ていました。

ー自分も同世代でよく買い物に来ていたんですが、当時の大須のゲームセンターはもっと賑わっていましたよね?

そうですね~。でも、今でもスゴい場所ですよ!? 格闘ゲームの大会も催されたりしていて、ゲーム通曰く、「あそこはレベルが高い」って話ですよ(笑)。イイ意味でちょっと近寄りがたい、あのアンダーグラウンドな雰囲気がイイ感じですよね(笑)。

ーもしかして水野さん、ゲーマーですか(笑)?

僕は違いますね(笑)。子どもの頃は、ずっとサッカーに没頭していたんですけど、思春期を境に音楽の方に興味を持っていかれまして、ロック系の3ピースバンドを組んだりと、それなりに活動していました(笑)。なので、音楽は趣味程度ですけど、楽器を弾くのが好きなので今でも楽しんでやっています。

ーなるほど~。ではショップはいつから始められたんですか?

ご縁のあったある方から、ゴミ、廃材が大量に出ているという日本の現状を聞いて、その話を聞いた所、自分の中に思う所がありまして、それから実際に現場にも伺って、有り余っている廃材を見て「何か出来ないものか? 」と感じ、2年半くらい前に廃材を利用して、モノ作りを始めてみたって感じです。

ー例えばどのような廃材を使っているんですか?

フロアマット、シートベルト、クルマの内装材(緩衝材)、アパレルの生地などなど、あらゆる所で廃材が余っているので、色々なものが素材になりますね。現在、食器やクッションなども制作していますが、今のところバッグがメインになっています。ゆくゆくは、素材を持ってきてもらって、オーダーメイド感覚で何かを作れればと思っているんですけどね。ショップはまだオープンしてから1年ほどしか経っていないので、このインタビューの話を頂いて、「何を語ってイイものか」と悩みましたよ(笑)。

ーオープン当初から、各メディアの取材があったそうじゃないですか!? 取材慣れはしてるはずです(笑)。

いやいや(笑)。オープン時は確かに、様々なメディア・媒体で取り上げて頂きました。廃材を利用してオリジナルアイテム・ブランドを展開している所って、日本ではまだまだ少ないんですよね。それをオリジナルショップも構えてやっているのは、尚更珍しいって事で取り上げてもらった感じですね。同業者が知り合いばかりって感じなので、まだまだ狭い業界なんですよね。なので、取材に来てもらっても、デザイン性やアイテムの質など、アパレルブランドとして聞かれるのではなくて、「なぜ廃材に目を付けたんですか? 」や「どうして? どのように? 」っていう質問が多かったですね。というか、それしか聞かれてなかった(笑)。

ー我々もそれは気になるので、聞かせてください(笑)。

分かりました(笑)。何より、一度も使われなかった余剰在庫や製造ミスによって余ってしまったなどの“奇麗な廃材”がスゴく多いと言う事。僕が最初に扱った廃材は、精密機械の部品などの緩衝材に使われるモノ。「使える“奇麗な廃材・ゴミ”は、新しい形で生まれ変わらせて循環させよう」という狙いですね。ちょうど世間も京都議定書の関係などで、エコに関心が集まり始めていたので、タイミング的な事もあって。そこから、試作品を作ったりと色々試して、現在に至るっていう…。

ーどこから・どこまでをやられているんですか? (仕入れ、企画、デザイン…etc)

材料を仕入れて、デザイン→製造→販売…と、ほぼ自社で行って、難しい製造の部分は一部外注にお願いをしています。企画・デザインは完全に自分達で行っているんですけど、製造に関しては、専門的な機械や知識が必要となってくるので、提携している業者にお願いをしているモノもあります。

ー製造はかなり専門的ですよね。どうやってベストな業者さんを見つけられたんですか?

ひたすら電話です(笑)。例えば縫製業者なんかは、愛知、岐阜、三重で300軒くらいあったと思うんですが、タウンページで電話番号を調べてすべて電話しました。「廃材の企画で、こんなアイテムを作りたいんですが…」と、お話して。ところが、半数以上は半ば休業状態で、自宅として住んでいるだけの状態だったんですよ。やはり、多くが中国の安さに押されてしまって。なかには中国に安く依頼して、それをまた仲介に入って売っている業者もいたくらいですから、皮肉なものですよね。そんなこんなで、今一番のパートナーとなっている業者さんも去年(2010)の秋頃からなので、まだ始まったばかりですよ(笑)。僕らもメイドインジャパンと掲げてはいるんですけど、その難しさっていうのは…なかなかですね。

ー行動力がすごいです! “メイドインジャパン”は、やはり今後もこだわっていく部分ですか?

そうですね。あと、廃材を扱う上で法律上、他国の廃材はそのまま輸入する事ができないんですよ。加工して仕入れなくてはいけないので、どうしても“奇麗な廃材”ではなくなってしまうんです。それに、国内で生産して、製造して、販売してっていう循環型のサイクルが行えていないから経済が循環せずに、不景気や不況にさらされてしまっていると思うんですよ。あとは、単純に日本製の素晴らしさを世界に示したいというのもあって、“メイドインジャパン”にはこだわっていきたいですね。

ーなるほど。…ちなみに、そういった経済、環境などに関しては、どこで学ばれたんですか?

いや、僕大学も行っていないですし、特にどこかで学んだという訳ではないです(笑)、完全に独学です。音楽活動している時に、ふと「俺って世の中に腹立っているかな!? 」って疑問に思ったんです。というのも、ROCKやPUNKって「反骨精神や反社会的なメッセージ、スピリットを持っているもんだ」っていうイメージがあるじゃないですか!? だから、そういう事を考えているうちに、世の中に対して自分が思う疑問や不満が出てきて環境問題に行き着き、気になったら調べたくなる性分からハマっていったって感じです(笑)。なので、動物愛護にも関心が湧きましたし、色々と知りたくなりましたし、それを音楽で表現しようと思ってましたよ。

ーなるほど独学なんですね。やはり、紹介して頂いた本田さんが「若いのにマニアックな事を知っている」とおっしゃっていただけはありますね(笑)。

いやいや(笑)。周りが先輩ばかりなので、そういったお話を聞かせて頂いたり、教えて頂いたりって事も多いですよ。それと知りたくなるとトコトン行かないと気が済まないっていう性格もあるんでしょうね。

ー本田さん曰く、よくダメ出しをされるとおっしゃっていましたが…(笑)。

そんな事ないですよ~(笑)。ダメ出しではなくて第三者からの意見を伝えるだけです(笑)。やっぱり経営者やトップの方って誰かから意見を言われる事って少なくなるから、自分が出来る出来ないは別として、バッシングも含めて、意見を言い合える相談相手が欲しくなるじゃないですか……って言っておけばいいのかな(笑)!? まぁ、何より付き合いが長いからっていうのが一番の理由ですね。

ー10歳以上年齢が離れていても付き合える間柄ってイイものですね。

僕なんかが言うと変ですけど、話していてもジェネレーションギャップを感じないですね。お二人とも一回り以上離れていますけど、本田さん(前回)も堀田さん(前々回)もお若いですよね。というか大須の経営者の方々ってホントにエネルギッシュで謙虚で、若さを感じさせる方が多いですよね! ……「MODERN PIRATES」のNALさんもセカンドブランドである「weicheBrise」大須に出されていますよね!? 僕、バンド活動をしている時に、ステージ衣装やらプライベートなど「MODERN PIRATES」一式で揃えていたくらい好きだったんですよ。実家から昭和区にあるショップが近いので、通いながら「住宅街になんていかついショップがあるんだ…」って思ってました(笑)。ぜひ、「こんな所にも大ファンがいますよ」と伝えて頂きたいです!

ーやはり「MODERN PIRATES」はファンが多いですね。では、本田さんから頂いた3つの質問にお答えください。ひとつ目「今でもガンダム好きですか?」

なんですか、この質問(笑)。ガンダムは好きです、大好きです(笑)! 世代ではないんですけど、僕は監督が好きなんですよ、富野由悠季さん。ファンの間では、色々と派閥の様なものがあるんですよ(笑)。例えば僕は、アニメで勧善懲悪ではないものを作り出した点や、宇宙に人が移り住む事でどうなっていくかっていう仮説をアニメで表現した所がスゴいと思っていて、かなり尊敬しています。今でもインタビュー記事を読んだりしてゾクゾクしています(笑)。今ほど文化として認められていない時代に、子ども騙しではないアニメを創り出したところがスゴいですよね。あと、表現者としてスポンサーなどにも屈しない姿勢も好きです(笑)。

ーサッカーもやっていた少年時代にガンダムも網羅するとは(笑)。

いやいや(笑)、多分昔から歴史が好きなので、その影響でハマっていったんだと思います。“知る事”が好きで「もっと知りたい! 」っていう欲求から、どんどんのめり込んでいくんではないかと。音楽も、聴く事や演奏する事はもちろん好きなんですけど、「その人が何を考えているか、何を歌いたいか」っていう事を知りたくなっちゃうんですよ。発想の源や物事の本質を知りたいし、自分にも吸収したくなっちゃうんですよね。

ーところで、ショップへのお客さんの反応、エコアイテムのニーズはどうですか?

環境問題やエコに対して興味を持っている方々が増えている様に、ウチの様な廃材を再利用したアイテムも興味を持ってもらえていると思います。「廃材で出来ているんだ! エコだね」っていう入口から購入される方もいれば、廃材を利用してエコだから興味を持ったんじゃなくて、単純に「このデザイン、イイな~」って購入される方もいらっしゃいます。僕らとしては、デザイン性で勝負したい気持ちが強いんですけど、このアイテムのストーリー性を知ってもらう事も大事かなと。どちらの方も満足されるアイテムを作っていきたいと思っています。

ーエコの定義もどこをどう切り取ったかで変わってくるので難しいですよね。

そうですね。「大量生産大量消費をやめて古いものを奇麗に使い切る」と「燃料消費を抑えられる新しいもの使い、エネルギーを大切に使っていこう」。双方の考えは、どちらも正しいんですよね。「廃材からアイテムを作ればエコ」、イエスorノーと聞かれれば、完全にイエスとは言いがたいですからね。というのも、捨てられている廃材を利用するには、洗浄しなければいけないですよね。そうなると、洗浄する際に環境負荷が掛かってしまう。厳密に言うと輸送の際もCO2が排出されてしまう。この場合は、なるべく負荷を掛けずに行う事がエコになるわけです。なので僕らは、洗わなくてもOKな捨てられる前の廃材、長距離輸送しなくてもOKな近場の東海地区から仕入れると言った具合に、“地産地消”の様な再利用を目指してますね。細かい所までこだわらないと、矛盾が生じてしまいますよね。

ーでは、ふたつ目の質問です。「バンドの夢はまだ持ってますか? 」

もう持ってないです(笑)。ビジネスとしては無理です。自分の表現方法として確実に残しておきたいな~とは思いますけど。元々、楽器を奏でるのが好きなので、作曲するのもインストばっかりです。一応共同で制作したりはするんですけど、“ライブで演奏”っていうのは、もう考えていないですね。完全に自己満足でイイんですよ(笑)。息抜きというか、完全に趣味です。

ーライブハウスに出てる頃はモテましたか(笑)!?

全然ですね(笑)! ちょうどクラブの勢いがスゴい時期だったので、完全にお客さんをクラブに持ってかれてました。「DJなんて、どこがイイんだよっ! 」って当時は大分妬んでましたね~(笑)。

ーそのビジュアルが勿体ないですね! ではみっつ目です「僕の事…好きですか(笑)? 」

(笑)。…好きですよ、もちろん。ゲイ的な意味合いは全く無いですけど(笑)、好きですよ。本田さんとはもう10年以上の付き合いですけど、食事の際でも恋愛や結婚の話を聞いた事がないので、そりゃ疑惑も出ますよね。もちろん、出会ってから今までずっと尊敬しています。僕が言うのもおこがましいですけど、少し不器用な一面もありながら、スゴく頭がキレるっていう。経営者として戦っているなって思います。あくまでも、尊敬という面で好きです(笑)。

ー尊敬ですね、なるほど。ところで水野さん、結婚は?

したいですね~。募集中と記載してください(笑)! コンパなんて行った事ないですからね。これまで強迫観念じゃないですけど、音楽や仕事をずっとしていないと、休んだり遊んだりする時間が勿体なく感じてしまうんですよ。そうやって息抜きしている時にイイ曲やアイデアを思いついたらどうしようと考えてしまうんで…(笑)。…まぁ、でも、絶対息抜きした方がイイに決まっているんですけどね。

ー誘いますし、紹介します(笑)! では最後に今後の展望をお聞かせください。

今でこそ、名古屋・大須発信のブランドが多くなっていますが、そんな中でも名古屋・大須を代表するブランドになりたいなと思います。そうなれるブランドだと信じてやっていますから。今はセレクトショップが溢れているので、魅力的なオンリーショップ、プライベートブランドを作っていきたいですね。「大須に行ったらあそこに行こう」、「あそこに行く為に大須に行く」…そんな存在になりたいですね。