有限会社ブリコラージュ 代表取締役 古川真琴さん

ーでは、はじめさせていただきます! まずは古川さんの経歴を教えて下さい。

愛知県・愛西市で生まれ、地元の小中高と進み、名古屋のインテリア専門学校へ2年通って、八事にあるインテリアコーディネート会社に就職したんです。そこで3年ちょっと勤めて、その後は稲沢に本社がある設計事務所へと転職して、約5年間稲沢で勤めていました。マンションのモデルルームの設営とか、外観・エントランスのデザインなどを主にやっていました。その会社は東京支社があったので、東京へと異動したんです。そこで知り合った同期の人間達と、今の会社の親会社を設立して、名古屋での仕事が結構あって、ちょこちょこ名古屋に来ていたので、「名古屋支社、名古屋事務所を作ろう」って事で2005年頃に出来たのが、今の会社です。

ーと言う事は、カフェを作ろうと思って立ち上げた会社ではなかったんですね。

そうなんです。元々名古屋の人間だと言う事で、名古屋支社の物件を探してあちこちを回っていたんです。第一希望は覚王山。他にも葵や丸の内、そういった所で物件を探していたんですが、なかなか良い物件が見つからなくて、大須まで探しに来たんです。当時は、大創さんではなくて、別の不動産会社に物件を紹介してもらおうと、大須の商店街を歩いていたら、たまたま今の『ぶりこ』の古民家を見つけて。

ー当時は大創さんではなかったんですね(笑)。

はい…当時はまだ存じ上げなくて…せっかくトークリレー紹介してもらったのに…すいません(笑)。たまたま歩いた商店街の印象が、それまでの大須のイメージと全然違ったのを覚えています。たまに地元の友達に連れられて、学生時代に遊びには来ていたんですが、学生時代はそんなに楽しい街のイメージでは無かったんです(笑)。でも、平日でも賑わっていた変わり様を見て、その時に「大須イイじゃん! 」って急に考えが変わったんですよ。雰囲気がスゴく良くて、ピーンと来たんです! 実際は、事務所として使うには広すぎて、予算よりも家賃が高かったのは確かですね(笑)。なので、「商店街にも面しているし、余っているスペースを使って何かやる!? 」って事で徐々にスタートしていった感じです。

ー『ぶりこ』さんのHPを拝見すると、そういった事の概要が記されていますよね。で、元々はテイクアウトのお店だったと。

そうです。現在は席があるスペース、ちょっと土間っぽい造りの所には席が無かったんです。カウンターがあって、そこでコーヒーを注文してもらって、「そのまま召し上がりたい時は、2階を使って下さい」ってお店だったんです。だから現在キッチンとして使っているスペースを事務所として利用していたり、2階も今ほど席数はありませんでした。今では40種類以上あるドリンクメニューも、当時は10種類あるかないかくらい。設計事務所+αという考えでやっていたので、とにかく無謀でしたね(笑)。

ー当時の古川さんのポジションはどんな感じだったんですか?

お店は当時の店長とスタッフに任せていたので、本業の設計事務所で働く+お金の管理ですね。…とにかくお金が出ていくばかりでした。4月末にオープンして、当初は物珍しさもあってか、オープン特需的に、それなりに繁盛はしたんですが、G.W.明けからはぱったり。通帳のお金が減る一方でしたね。「これじゃ〜イカン」という事で、お客様からランチやスイーツのご要望を頂いていたので、徐々に今の様なカフェの形態へと変えていったんです。

ー“通帳”というワードが出てきましたが、個人資金という事ですか?

ほぼそうですね(笑)。当初は社長と私が共同で出資したお金があったんですが、当然使い果たしてしまい、借り入れもしていなかったので、個人資金で回すしか無かったんです。ホントに身銭ですよ(笑)。3年くらいは報酬がなくて、無給でしたね。あまりにもお店から利益を上げる事が出来ないので、本業を活かして、専門学校でインテリアコーディネートの講師をバイトでしていましたからね。未だにその時の身銭は回収できていません(笑)。その後は、お客様の要望を積極的に取り入れたり、スタッフのアイデアを活かしながら、3年目にはようやく+-が相殺される所まできましたね。

ー現在の繁盛ぶりからは想像できないですね。途中、めげたりはしませんでした?

不思議とめげる事はなかったですね。私が鈍感なのかもしれませんが(笑)。でも、“コチラが改善した事に対して、お客様からリアクションがあった”っていうのが、一番大きいですね。インテリアとは違って、飲食はリアクションが速い。ホントにそう感じる事が多いです。それが喜びにもなるし、活力になる。今はインテリアの仕事を一切やってないんですが、それまでずっとやっていた“やりたい事”をやれない・やらない事に、未練を感じない程です。

ー苦労を苦労と捉えないのが素晴らしいです。そういう方だからこそ、物件とも運命的な出会いが出来るんだと思います。

良い物件を求め過ぎて、時間は掛かってしましましたけどね(笑)。当時、新築よりかは、古いもの・古いものの中でも、味のある・雰囲気のあるもの…という感じで、漠然と本社の人間と共有しているイメージはあったんですが、今のお店である“町屋造りの古民家”をピンポイントで探していた訳ではなかったんです。ホントに偶然。元々、呉服屋を営んでおられたそうで、築65年になるんですが、手を加えていなかったので古き良き町屋造りそのものが、そのまま借りられたのが幸いです。

ーなるほど。話は変わって、2号店である『STEAMFOOD&CAFE ぶりこ』が出来たのはいつですか?

あちらは2008年に出来たので、5月で3周年になりました。1号店が古い町屋なので、次の店舗は古い洋館を探していたんです。でも、なかなか近場でお目当ての物件はなくて…もちろん、その時は大創さんにお願いしていますよ(笑)! 色々と紹介して頂く中で、現在の2号店の場所も紹介して頂いたんですが、初めはちょっと乗り気でなかったですね。というのも、新築で、1号店の倍の広さがあって、家賃もやっぱり高い…でも、物件探しに難航していたので、「下見だけでもさせてもらおう」という事で、見に行ったんですよ。そうしたら、オーナーさんに気に入ってもらえて、アチラもテナントにカフェを希望していたそうで、猛プッシュを受けたんです。でも、蓄えも無かったから「無理です、無理です」と言っていたら、保証金を1/10程にして頂いたり、色々と好条件を提示して頂いて、銀行からもお金が借りられた事も手伝って、縁とタイミングのおかげで決められました。

ー3年目の段階で+-0くらいとおっしゃってましたが、その時期に2号店を出そうとしたキッカケは?

当時はまだ旦那ではないんですが、今の旦那が猛烈に2号店を勧めてきたのが大きいですね(笑)。彼がスタッフとして入った当時から何かある度に「いつやるの? いつやるの? 」ってプッシュされていたんです。私自身、2号店なんて出来る訳が無いと思っていたんですが、薦められるがまま出店しました。つくづく思うんですが、自分自身が強く「何かをやりたい」ってやり始めた事が無いなって(笑)。いつも誰かや何かに押されて、何かをやっている気がします。流れに身を任せたり、流れてきたモノを拾ったり(笑)。

ー流れに乗るのがうまいってスゴい能力だと思います。話にも出てきた旦那さんとの出会いも教えて下さい。

あまり知られていないんですが、ウチの会社、以前ダーツバー&ダイニングを千種で経営していたんですよ。そこの店長の紹介で『ぶりこ』のアルバイトとして入ってきたのが、旦那なんです。第一印象は、「どう見ても、ウチのお店っぽくないな」っていう、茶髪も茶髪で、明らかにいわゆる“肉食系”。それまでのウチのお店のスタッフの毛色とは違うなって。彼の前職は飲食ではないんですが、元々飲食系の仕事経験もあるので、「またやってみたい」って事でウチに来たんです。スタッフ不足もあったので、「ウチとしては良いけれども、前職ほどの給料は出せないし、年齢も年齢なので辞めていくだろう」という認識でした(笑)。

ーけれども、仕事もプライベートも共にするパートナーとなった訳ですよね。

そうですね。後から聞いた話ですけど、ウチのお店の帳簿関係に目を通した時に、俄然やる気になったみたいです(笑)。「変えて、上げてみせる」的な。それに、フレンチの修行をしていた彼が入った事で、フードメニューがスゴく充実していきましたね。当時も今も行列を成している『Hashoe de Rosso』さんに対抗して、「ウチも絶対、行列が出来る店にする! 」って意気込んでいるのを私は「へ〜スゴいな〜」って感じてました(笑)。

ー正反対の人間性ですね(笑)。いちスタッフから旦那さんへと変わるキッカケってありましたか?

「2号店を出そう」って猛プッシュされていて、いざ物件探しとなった時に、一緒に物件を回ったり、営業後に仕事の話をふたりでよく話す様になったのが大きいですね。…ちょっと恥ずかしいですね(照)。でも、自然とそういう流れになっていきましたね。なので、2号店が2008年の5月にオープンして、その年の秋に入籍しました。

ー旦那さんのお店での役割はどういった事ですか?

主に2号店を任せています。ディナーのキッチンに入って、フードを作っています。役職としては彼が取締役で、私が代表取締役です。…2号店の“スチームフード”っていうアイデアも彼のモノです。元々、1号店でもスチームフードは扱っていたんですが、先ほどもお話した通り、元々2号店は洋館をイメージしていたんですが、それが不可能になったので、お店の“売り”を料理にしようという事で、私よりも専門知識に詳しい彼が、「2号店はスチームフードをメインに」と推していたので任せました。

ーどちらのお店も女性をメインターゲットになされている印象ですが、どうですか?

大いにありますね。やっぱり、女性のお客様は、友達と来たり、両親と来たり、彼と来たり…といった具合にお客様を連れて来て頂けるので。でも、2号店の方は、場所柄なのか、ランチ時はサラリーマンの方が多いですね。それに夜も営業しているので、年齢層も幅広いです。1号店は、今でも新規のお客様が7割以上来て頂けますから、それぞれのお店での客層は全然異なりますね。1号店は、商店街の中にお店があるので、買物途中で来店される方が多いので、回転率は他のカフェよりも良いのかなって思います。2号店は逆に、広々としているのも手伝ってか、寛いで頂けるお客様が多いですね。また、その分リピーターの方も多いです。

ー2号店の『STEAMFOOD&CAFE ぶりこ』もキャンドルのイベントなどがあって、カップルの来店が多いですよね。

毎週木曜に開催しているんです。3年経っていますが、まだまだ改善点が多くて、特にスチームフードの特性として、夏場が弱いんです。あれこれと、テコ入れをした中のひとつですね。なんで木曜かと言うと、始めた当時の週の中で一番売り上げが低かったからなんです(笑)。今はイベントのおかげもあって、木曜も好調です(笑)。

ー色々な事情が裏に隠れているんですね(笑)。では、伊藤さんからみっつ質問を頂いているので、お答え下さい。ひとつめは「お酒はいつから強い? [そば屋はいつ行く(笑)? ]」

強いかどうかは分かりませんが、とにかく好きですね! 小学校の時から梅酒は飲んでいました(笑)。伊藤夫人と飲みに行く時は、とにかく楽しいですね。ふたり共記憶がないって事が多いです(笑)。いろんなお酒を飲んで、ワーワー騒ぐ感じです(笑)。サラリーマン時代は後輩と一緒に飲みに行くと、説教魔になっちゃてたり…でも記憶がないんですよ。後から聞くと、「私って嫌な先輩だな…」って思います(笑)。旦那は飲めないので、ひとり晩酌もしちゃいます。

ーところで「そば屋はいつ行く? 」ってのは、どういう事ですか?

そば居酒屋の事ですね。一度旦那とふたりで行った事があって、素敵な所なんですよ。去年の夏頃伊藤夫人と飲みに行った時に、そのそば居酒屋の話をしていて「今度行こー」って話になったんですけど、…まだ行けてないですね(笑)。伊藤夫人の休日前に行った方が良いと思うので、彼女の連絡待ちなんですよ(笑)。私が連絡していない訳じゃないです(笑)。行きたいですね♪

ーお互いお酒がお好きって事ですね。では、ふたつめ「いつも夫婦ふたりで作戦会議…何を話しているの? 」

ホントに作戦会議です(笑)。私が1号店で朝から勤務、彼が2号店で夕方から勤務なので、ちょうど夕方前頃にその日初めて顔を合わせるんですよ。なので、ほぼ毎日同じ時間帯に作戦会議です。…でも、周りから見れば、「いっつもふたりで何を話しているんだろう? 」って思われてるだろうなって思います(笑)。「いっつも仲良いね! 」ってからかわれたりしています。平均すると、約2時間くらいは話しています。寒い日も暑い日も外で話し込んでいます。長いですけど、ちゃんと仕事の話なんですよ(笑)。

ープライベートも仕事も仲が良いって事ですね。ではみっつめ「3号店は? いつでも紹介しますよ(笑)! 」

ははは、ありがとうございます(笑)。3年周期で次のお店を出しているので、そろそろではあるんですけど、具体的にいつに出すかは決めていないです。けど、やるならば、スゴい小さいお店をやりたいですね。2号店の様な広いお店は、もうイイです(笑)。言葉が直球過ぎますが、“儲かる”お店をやりたいですね。小さく産んで、大きく儲ける……(笑)。誰もが考える事だとは思うんですけど、そうしたいです。スタッフの数も20人以上いて、どんどん増えていっているので、今居るスタッフの為にも、環境を整えていきたいって願いもありつつ。

ー確かに、人件費だけでも大変ですもんね。

ウチなんかは安月給なんですけど、スゴく頑張ってくれているんですよ。短い休憩時間でご飯を食べて、ずっと立ちっぱなしなのが、飲食業じゃないですか。せめて人様並みの平均的なお給料を出してあげたいんですよね。その為にも、いろんな人達から優れた経営学を学んでいます。今までは“なんちゃって経営者”だったので、真剣に経営していこうと(笑)。

ー社員の事を考えてくれる経営者だけでも素晴らしいです! お店を出したいっていうスタッフさんも多いんじゃないですか?

そういう子と、サービス業を極めたいっていう子の半々ですね。ひとり今度、念願のお店をオープンさせる子がいます。その子はウチに居る時からスゴく頑張っていて、着実にひとつひとつ目標をクリアしていきましたね。私とは大違いです(笑)。私も、“カフェを経営する上でしてはイケない事集”なら、いくらでも教えてあげられるんですけど(笑)、“こうしたら成功する”っていうのは、自分自身分かっていないです(笑)。

ーなるほど。では最後に大須とお店に対して、古川さんの考えを聞かせて下さい。

私個人の印象なんですけど、“馴染める”様になりました。学生時代からそんなに馴染みの場所っていうイメージではなかったので、ようやくです。大須を案内できる立場になった感じです(笑)。当初は、お客様に大須の道案内を頼まれても、なかなか答えるのに時間が掛かったり、分からない事が多かったんですが、今では大須に店を構える者として、大須の魅力を人に伝えられる様になりました。なので、ウチのお店に来られた際には、スタッフに大須の事を聞いて下さい。+αの接客として、大須案内人に負けないくらいの勉強をしていますので、是非大須の魅力を『ぶりこ』と共に味わって下さい!