株式会社アンティークルーズ 代表取締役 小川賢司さん

ーまずは小川さんのおおまかな経歴を教えて下さい。

名古屋生まれの名古屋育ちです。古着好きになったのは中1くらいですかね〜。何かの雑誌で見た古着特集と、姉が大須で買ってきたGジャンを同時期に見てバチっと来ましたね(笑)。元々物が捨てられない少年というのあったんですけど、そのタイミングですごく楽しくなってしまいましたね。当時、1ヶ月に1回くらいパルコの前でフリーマーケットをやっていて、もちろん中学生時分では買えないモノもあったんですが、数百円のモノもあったりして。それで高校の頃には、芸能人などがこぞって古着を着用したりして、古着ブームのような事が起こったんですよ。より一層洋服に興味が湧いて「こりゃ東京に行きたい、行かなきゃ」と思いまして、その為に東京の大学を受けて上京(笑)。そのままの流れで向こうの洋服屋さんで働く事に。古着屋が多かったですけど、そうじゃないお店でも働いていました。それと、高校からの友人も東京で他の洋服屋さんに勤めてまして、「いずれは自分達のお店を」という考えを高校時代から語っていたんです。まさか実現はしないだろうくらいの心持ちだったんですけどね。それと、自分自身、その頃から結婚を考えるようになりまして、ここらでやるかと奮起した訳です。

ーお店をやるのは元から名古屋に戻ってという考えだったんですか?

そうですね。東京だと原宿とかにいっぱい買物でお客さんが来るじゃないですか〜名古屋の人も買物に来たり。そうすると、こっちの地方の人達は自分がどこから来たのかを全く話さなかったり、地元の方言で話さないんですよ。他の地方の人達は「東北から来ました」とか、地元の方言を話したりするんですけどね。こっちの人達は「旅行です」とか「観光でちょっと…」みたいにどこか見栄を張ったり、東京に負い目を感じて格好をつけるみたいな、どこかそういった地域性、県民性ってありますよね。で、よくよく考えたら自分にもそういった事あるなぁと感じて。だから、名古屋でお店を出して、「この狭い日本なんだから、そんなに変わりはないよ。僕らも充分お洒落じゃないか」って示せれたらいいなと。だから、自信を持って名古屋から東京に買物や旅行に行って欲しいなと思って、27歳の時にオープンしました。

ーそれで、先ほどお話しされた高校の時の友人と共同経営で始められたんですか?

共同経営となると、どうも失敗する気がしたので自分が上司で、友人には俺の部下になってくれというようにしました(笑)。っていうのは、“共同経営でやっている”であったり、“お友達とやっている”と見られたり、感じたら、絶対にうまくいかない感じがしたんですよ。だから、今となっては余計に友人関係ではいられなくなってしまいましたね。メールもしづらいですし、休日に何をしているかも分からないですし、聞きづらいですからね(笑)。でも、それを分かってくれる人だったからよかったですね。なかなか友人関係で経営していくのは難しいですからね。やっぱり、その関係を辞める覚悟がないとうまくはいかないですよ。

ーお店は最初から現在のこの場所(大須3-13-38 第二水野ビル1F・2F)で始められたんですか?

そうですね。もう5年、6年経ちますが最初からこの場所、初めから『LOVE VEGAS』という店名で。名前の由来は、結構安易に決めてしまったなって(笑)。なんか分かりやすいネーミングがいいなと思って付けました。オープンから2年後に2階にも手を伸ばしてやり始めました。1階はセメントを駆使して工場っぽいイメージでアイテムはレギュラーを中心にトラッドなモノ、2階はアメリカの田舎風をイメージして、マニアックなモノを中心に古着でしか醸し出せない味のあるアイテム、それと雑貨を置いてます。

ー他の古着屋との差別化など、お店のコンセプトはどのようなものですか?

う〜ん、気遣い無く入れるお店を目指して、おもてなし日本一ですかね。どうしても洋服屋さんにはお客さんの方が気を遣って入ってしまうので、そういった事を感じないお店にしたいと考えてやっています。あとは、2階なども見てもらうと分かるんですが、“コテコテの洋服好きがいない店”という感じでやってます。うちは古着屋ですけど、スタッフの中には古着しか着ないっていう者はいないんです。あとうちの良い所は、スタッフ4人全員がバイヤーな所です。オーナーだけが買ってくるだけではお店がうまく大きくならないんじゃないかと。お店の軸を幹と考え、そこから枝のようにいろいろな考えやスタイルがあって良しとする。自分の考えでは有り得ないモノももちろんあって、「なんでこんなの買ってきたの?」って思う時もありますけど(笑)、そこは行かせた覚悟も責任もありますから、黙って見守っています(笑)。でも、みんなに責任感が出て、良い環境が出来て、良いサイクルなんじゃないんかなと思いますね。

ー取材やプライベートの買物で何度か来店した事があるんですが、良質なのに安価な印象を受けるんですが、そこは意識されての事ですか?

それ、よく言って頂けるんですが、あまり意識した事はないですね。もちろん、ちゃんとこっちも儲けは考えて設定していますからね(笑)。全部がお安いアイテムばかりではないんですが、どうもそういうイメージがあるようですね。どちらかと言えば、「マニアックなアイテムも揃えていますよ」っていう気構えですね。セレクトしているアイテムは、“アメリカでお洒落なヨーロッパモノを買い付け”っていうイメージですね(笑)。あとは、サイズとコンディション。これらには気を付けて、職人技を駆使して買い付けてます。

ーご自身や他のスタッフさんが行かれる時もあると思いますが、買い付け時に念頭に置くことってありますか?

いや、特にはないですね。他のスタッフが行く時も「何買って来てもいいよ」くらいの事しか言わないですね。「売れんでもいいから」くらいの感じで(笑)。でも、そう言われて行く方はどう思っているんでしょうね(笑)。ちょっと緊張して行くんしょうかね。やっぱり、誰が行ってもそうなんですが、アイテムを見て「あっ、あの人に似合いそう」みたいにお客さんの顔が思い浮かぶモノを買ってきて欲しいですね。こういう人にこういう服が似合いそうってイメージできる事が大切ですよね。

ー小川さんを紹介して頂いた古田さんが「買い付けで海外に渡る時、ぶっちゃけハジけてません!? 」っておっしゃられてましたが?

そういう事がありそうですけど、なかなか時間に追われてしまいますよね。向こうで他の日本人バイヤーの方と話しても、「とにかく時間がない! 」って言われる方がほとんですよ。他の方の買われたアイテムを見て、「うわ〜こんなに良いモノがいっぱい。頑張って集めたんだろうなぁ」って感心してしまいますもん。1都市1週間ですね〜複数都市を回る時は、その数に応じて。まぁレンタカーの料金が安いっていう事情もあるんですが(笑)。答えは“そんな暇はない”ですかね(笑)。

ーそうですよね(汗)。では、名古屋人として大須の印象ってどうですか?

東京にいた時はあまりよく知らないですけど、高校時代によく来ていた時はこんなに人はいませんでしたね。その頃は外国人によく会うな〜っていうイメージでしたね(笑)。

ーでは、もう少し範囲を広げて名古屋の街のイメージやファッションに対してはどう感じてますか?

客観的に地元を見る機会ってそれまでなかったんです。それが上京して、東京などに対して負い目や見栄を張る感じって、結構あるな〜って自分も感じて、ショックでしたね。「その良くない気質ってどうなんだ!? 」って感じて、アメリカに行った時も、日本人としてそういった気構えになってしまう。自信が無い訳ではないんですけど、どうもこれではいかんなってすごく思いました。ファッションに関しては、逆にそれほど凄いと感じる事は無かったですね。東京は人が多いから、その分お洒落と思う人の割合が多いんだなって。それに加えてファッション好きや観光客が集まる。それはあの街の魅力ですよね〜。あれだけファッションに特化した街って、世界でもあそこだけなんじゃないですかね。名古屋でもああいう風にっていう訳にはいかないですからね〜人も足りないですし、街の条例も雰囲気も違うから。

ーそんな名古屋をお店を通じてどう変えたいですか?

僕の壮大なプラン(笑)は、堀川を綺麗にして、納屋橋の方から名古屋を活性化させたいですね〜。河村市長と相談しながら(笑)。あと、外国へ行くといつも思うんですが、街並がすごく綺麗なんですよね。それに対して日本はただのアジア風。せっかく日本特有の文化があるのに、それを活かせずに終わっている。例えば、田んぼに広告看板があるじゃないですか!? あれはとてもじゃないですけど、信じられないですよ。田園風景が台無しですよね。それに、やっぱり名古屋にしか出来ない名古屋らしい街並を作りたいですね。そして、そんな綺麗な街並の一部にうちのお店もなりたいですね。逆にお店に関しては、スタッフみんながよくやってくれるので、こうしたいという考えは自分自身ないですね。会社を大きくして、どれだけみんな幸せに出来るか、それだけを考えて社長をしていかなくちゃなって思います。街並作りが出来なくても、洋服を通じて名古屋の発展になれば良いなって思ってます。

ー名古屋を、そして大須を盛り上げましょう! 古田さんから

の質問です。「アンティークや古着の文化はこれからどうなっていくんですか? 」

まじめな質問ですね(笑)。僕が思うのは、最近パソコンやネットの普及がすごいじゃないですか、だからこそ、それ以前のモノしか魅力が無くなるんじゃないかと思ってます。80年代も90年代ももちろん良いモノはあると思うんですけど、それよりももっと前の時代のモノって、やっぱり色濃く残っているし、記憶にも残っている。しっかり10年代毎に色が分かれていると思うんです。各年代毎に「アメリカには○○があって、イギリスでは○○だった」というように、良い意味で非グローバルだったと思うんですよ。だから、それらの時代の洋服を大切にする人が、より増えるんじゃないかなって思います。今現在あるモノって、古き良き時代にしかない輝きや魅力のマネやコピーばかり。今、50年前のデニムが高いからと言って、今のデニムが50年後に高くなっているかと問われたら、そうじゃないと。今のモノは、50年後でも「良い! 」と言われる理由が無いんですよ。あとは、みんなが買物上手になると思いますね。情報がすぐに、簡単に手に入るし、共有できるから。お客さんは賢い消費者になっていくと思いますよ。でも、古着は高くなってしまうんでしょうね(笑)。

ー最後の質問です。古田さんが「最近、本当に子どもと遊びに行けてますか?(忙しいはずなのに…)」とおっしゃてました。

もちろん、休みの日には子どもと遊びに行ってますよ(笑)。癒しの時間ですよ。3歳と0歳がいて、ふたりとも女の子です。今年の夏休みは0歳の子がいるのもあって、遠出は出来ませんでしたけど、その分公園なんかで楽しく過ごしましたね。あと、最近はもっぱらスーパー銭湯ですね(笑)。他には、近場のショップの方や古着屋さんとは仲良くさせてもらってるので、休みの日や仕事の前後に若宮でフットサルを楽しんだりしてますよ。仕事もプライベートもどちらも充実させてこそですからね。家族旅行を目標に仕事してますから(笑)。うちの会社の特徴として、シフト制なんですけど、ぜひともスタッフのみんなに旅行をして欲しいと、シフトの休みとは別に有休も何日か設けているんです。休みも出来る限り、その人に合わせて調整してます。「彼女が出来たら必ず休みにしてやる!」くらいの気持ちで調整してますよ(笑)。やっぱり休みがあった方が、仕事もだらけないですからね。