(株)ウェンディ 代表取締役 堀田幸嗣

ーいろいろとお聞きしますのでお願いします! まずは堀田さんの経歴を教えてください。

生まれも育ちも名古屋、大須じゃなくて名駅の方で生まれました。小学5年生くらいの時に金山に引越して、それから実家もずっと金山。まぁ、大須に近い事もあり、小学校、中学校の時は自転車で近くを走り回ったり、ラジコンや学生服を買いに来たりしていたかな~。大須へは、それから21歳くらいの時に正式に足を踏み入れた感じ(笑)。

ーその中学時代の大須はどうでしたか?

当時はビーバップ(漫画「ビー・バップ・ハイスクール」)が流行っていた影響もあり、全盛期だったんじゃないですかね(笑)!? さすがに僕は靴下の中にお金を隠したりっていう事はしなかったけれど、悪そうな若者が集まってくる印象はありましたね。当時から僕が21歳で商売を始めるくらいまでは、ずっとそういう時代、そういう街の印象だったんじゃないですかね。アンダーグラウンドの香りが漂う様な(笑)。初めてのお店はメンズだったので、若い男性のお客さんが多かったんです。だから、お会計の時に出される一万円札が何故だか湿ってました(笑)。

ー我らが大須にもそんな時代があったと(笑)。話は戻りますが、21歳の時に、もうお店を出されたんですか?

そうです。大学4年生の時に、就職をするか、どうするかっていうのを考えて。それまでは、バイトもしていましたが、実家に住んでいて、たまにお小遣いをもらったりっていう生活だったんです。でも、20,21歳の時期って、就職や人生を考えるじゃないですか、親父に「お前はどうするつもりなんだ? 」って聞かれたり。そうこうしていたら、親父が「どこかに就職をするか、金を借りて何か商売をするかだな。必要なら保証人のハンコは押してやるから」って言われたんです。それがきっかけですね。それと、就職するのが嫌だったっていう甘い考えも、もちろんありました(笑)。

ーけれども、何をやるかも決まっていない状況ですよね?

アメカジのお店でバイトしていた経験から、「アメカジショップをやろう。やれない事はないな」、「大須には古着屋は多いけど、新品のお店はあまりないよな」と考え、当時、万松寺通には若者向けのお店が少ない事に目を付けて、現在も『BASE』がある、万松寺通と本町通が交わる角で若者向けのメンズのお店を始めたんです。元々は文房具屋さんがあった場所で、タイミング的にちょうど良いっていうのと、角で立地も良いから土日になれば人もたくさん通るだろうと、あっさりとそこに決めました。

ー街の印象はかなり重要ですよね。それにしても、かなりの若さでお店を始められたんですね!

いや~大変でしたよ。仕入れはなんとか出来るようになったんです。が、当時はインポートアイテムの仕入れ値にいくら載せて売れば良いのかも分からない(笑)とか、アメリカに留学している友達に頼んで「あのブランドとこのブランドのアイテムを買って送ってよ」みたいな事もしてたくらいですから(笑)。時には他店で購入したアイテムをそのまま陳列して、そのままの値段で売ったりもしましたよ(笑)。とりあえず、“何でもある店”にしたかったので、そんな事までしていましたね。

ーある意味、スゴいですよ(笑)。当時の反響はどうでしたか?

運が良かったのか、当時、大須に徐々に若者が増え始めていた頃で、はじめの2,3年は好調でしたね。儲かったかと言われると、計算も出来なかったのでなんとも言えませんが(笑)。でも、それなりに余裕もあって、坪数の割には売れてました。

ーそれがベースになって、店名『BASE』になったんですか?

いやいや、当初から店名は『BASE』でやっていました(笑)。大須には年配の方も来られるので、とにかく覚えやすい店名が良いかなって思い、“短くシンプルに”を心掛けた結果ですね。もちろん、長い店名も候補に考えていましたよ。何か特別な思いを込めて「これだ! 」って決めた訳でもないので、本当に安易に決めてしまった感じはあります(笑)。まぁ、「メンズっぽいのにしよう」くらいですね。まさか今ではレディースのお店をやってるなんてね(笑)。

ーメンズ→レディースの変貌を遂げた経緯はどうしてですか?

店を始めて3,4年くらいした時に、大須への若者の来店増加に伴って、ウチの様なお店が増えてきた影響です。大須全体にして10~20店舗増えたと思います。それに、ウチよりも品揃えが良いお店が増えた事。当時は「会社をどうするか!? 」くらい業績が落ち込みました。でも、そのちょっと前から委託でレディースを扱っていたんです。それがなかなか好調だったことと、仕入れ先のメーカーも数が豊富で「他店とバッティングもないだろう」という事から、レディースを始めようと。それに、ちょうど大須にレディースのお店も少なかったですし、メンズライクな古着やカジュアルのレディースくらいしかなかったので、「レディースをやっちゃおう」って感じで、メンズをクローズして始めました。反対意見も多かったんですけど、とにかく次に動きたかったっていう感じでした。

ーいや、その方向転換もなかなか出来る事じゃないと思います。

あの時だから出来たんだと思います。今だったら無理ですね(笑)。ファッションに関して興味が無かった…とまでは言いませんが、詳しくなかったですから。ようやく今、好きになって、いろいろと分かる様になってるくらいなんで(笑)。それに当時は実家に住んでいましたし、そこまで欲も無かった…、計算も働かなかったですから(笑)。とにかく支払いだけはしなきゃっていうスタンスでしたね。当時は借金も終わりかけていて、ようやく終わったっていう時だったのに、また(笑)。

ーでも、3,4年で借り入れをペイできるほど利益が出たっていう事がスゴいですよ。

いやいや、それだけ当時の大須の勢いがスゴかったっていう事ですよ。謙遜ではなく、ウチだけが流行った訳じゃなくて、大須全体に人が集まってきたっていう感じでしたよ。高校生のような若年層が来店するようになって、そのイメージのおかげで高校生のお客さんが口コミでお客さんを呼んでくれる様になりました。当時の若者の大須の街への期待がそういうところだったんじゃないですかね。それと、同じ頃に古着ブームも起こって、さらに活気が溢れました。なぜなら、「Levi’s」501をハンガーで2,3本置いて置くだけで、古着屋じゃないウチでも売れましたから(笑)。

ー現在の大須の産声ですね。それからはどうなりました?

少し経つと、やはり売れ行きが悪くなってくる…そこで、売れなくても良いから、お客さんに来てもらう、長くお店に居てもらう…。そこで、大家さんが使わなくなった2階や地下部分も借りて、お店全体、ウチの建物の中に長く居て頂く事を目指しました。なので、化粧品を置いたり、香水を置いたり、雑貨を置いたりっていう形。レディースは仕入れ先を一軒一軒回って、少しずつ信用を得て、というやり方だったので形になるまでは時間がかかりましたけど。それからは、増えたり減ったりを繰り返しながら今に至る感じです。今やっているお店は、金山、近鉄パッセ、栄の地下、大須の新天地通と『BASE』です。やりながら学んできたので、最初は失敗もありましたけど(笑)。結局、僕自身、どこかのメーカーに勤めていたとか、お店で修行・経験を積んだっていう訳じゃなかったので、人並み以上の授業料は払っていると思います(笑)。

ーそう考えられる人が成功者になるんですね。では、「あれは失敗だった? 」そんなエピソードはありますか?

以前、金山の地下にお店を出していた事があって、その時はキヨスクの様な形態で、雑貨やアウトレットのアパレルを置いていたんですけど、通勤の方々ばかりで、全くダメでしたね(笑)。毎日同じ顔ぶれな訳じゃないですか!? 一回来たら当分は寄らないですよ(笑)。それに、ベルギーワッフルを置いた事もありますよ。それはかなり売れましたね(笑)。まぁ、でも全部失敗と言えば失敗ですよ(笑)。毎度毎度手探りで始めてしまってますから。本当に必死ですよ~。

ーワッフルには驚きです! では、大野さんから頂いたみっつの質問をお願いします! ひとつ目「多店舗経営や多趣味など、多角的な行動の源は? 」

う~ん、やっぱり自分には「これだ! 」っていうのが無かったので、いろいろと手探りでやったからこそだと思います。プライベートだと、いろいろと趣味はありますが、その中でも昔からクルマが好きで、レーサーになりたいくらい好きでした。走る事が好きで、20歳くらいの時はいわゆる走り屋みたいな事をしていたり、今ではたまにカートをしに行ったりしています。あとは、今の時期だと、時間が空いたら午後3時くらいでもスキーをしに行きます。

ー時間は有効活用ですよね。ふたつ目は「いつも街ブラ中に会うけど、いつ仕事(実務)をしてるの(笑)? 」です。

確かによくお会いしますね~。でも、決して遊んでいる訳じゃないですよ(笑)。お店とお店を行き来している時にトモさん(大野さん)が「なにやっとるの? 」と話し掛けてくださるので、僕はいつも「やる事ないので歩いてるんですよ」って冗談でお話するんです(笑)。各店長それぞれが忙しくしているので、伝達係の様に各店を行き来しているんですよ。僕は雑用係ですよ(笑)。

ーやはり社長業はお忙しいと言う訳ですね。ではみっつ目、「女性4人(奥さん・娘3人)に囲まれて家に居場所はある(笑)!? 」

9歳、4歳、2歳…いや、10歳、5歳、2歳ですね(笑)。今は娘たちがまだ小さいので、僕の出勤時にちょうど起きてきたり、帰宅時に寝ちゃってる事が多いので、煙たがられるというよりはなかなか会えてないですね(笑)。

ーもうひとつ自宅があるという訳ではないですよね(笑)!?

残念ながら無いんですよ~(笑)ちゃんと毎日家に帰ってます。

ー真実をありがとうございます(笑)! では最後に今後の展望、大須への思いを聞かせてください。

改めてウチの取り柄、ポイントは何か? 何をすべきか? というところを見つめ直してやっていきたいですね。近いところでは、改装や商品の取り扱いを少し工夫したりっていう事を既に決めているので、『BASE』というお店を会社のベースとなる様に(笑)、しっかり完成させていきたいですね。特徴や特色、店名を聞けば何をやっているのかがすぐ分かる様なお店作りをしていきたいですね。大須に関しては、何より感謝です。多くの人たちが努力して、一生懸命やってきたからこそ、全国有数の商店街として多くの人が訪れている訳ですから。ウチもその一端を担っていって、還元出来れば良いなと思います。

ーBASEビルに期待しています! 次回の本田さんはどんな方ですか?

初対面で何気なく僕が「大須に出店したら!? 」と言ったら、「出します!! 」で即日即決! っていう方です(笑)。英語が堪能で海外の友達もたくさんいらっしゃる、魅力満載の人物ですよ。