ECCENTRIC SUPER TATTOO タトゥーアーティスト SABADO

ーSABADOさんの経歴を教えて下さい。

岐阜の多治見市生まれ。ずっと地元で育って、学校卒業して20歳くらいの時は、SONYとかの機械の設計をしていた。だけど、ふと「やっぱり男は冒険しなきゃ! 日本から出ないとダメだ」と思って、L.A.で1年くらい過ごしたかな。その後、また1年、アメリカ中をバイクで行ったり来たりと旅をして、その流れでメキシコに行き、中米・南米まで。結局6年くらいはずっと向こう(海外)にいたかな。

ー海外ではどんな感じの生活をしていたんですか?

途中まではある程度、一定の土地でステイして働きながら旅をしていたんだけど、のちに本当に旅をしながらの生活になるから、お金も尽きてくる。そんな時、中米で冒険家の日本人に出会ったんだ。その人に「アマゾン川をイカダで下るから一緒に行こう」と。その時に、なんか中米や南米に魅力を感じて、またひとりで戻って海沿いを旅していた。宿に泊まる様な旅に面白みを感じなくなっていたから、現地の人が海沿いに小屋を建てていたんで、そこで一緒に生活したり。そこのアルゼンチン人のおっさんが、ヒッピーの様にアクセサリーを作っていたんだ。それを見て、「俺の方がうまく作れる」って思ってさ(笑)。というのも、手先には自信があったから。絵を描いたり、物を作ったりするのが好きだったしさ。それで、ネックレスやイヤリングを作ったりして、日銭を稼ぎながら南米を2周くらいしたんじゃないかな。南極の方まで行ったしね。

ータトゥーとの出会いは海外ですか? 経緯を教えて下さい。

25歳くらいにブラジルでアクセサリーとかを売っている時に、たまたま路上でタトゥーをやっている人と出会ってさ。そこで仲良くなって、「タトゥーを入れてやるよ」と言われたのが、初めてかな。そっから。その後も物売りをやっていたんだけど、聞いてもいないのにタトゥーを教えてくれるんだわ、そいつが(笑)。そんな生活が1年続いた頃、ひとりでいる時にふと、「タトゥーでもやってみようかな」と思って。道具も無いけど、裁縫セットの針にインクを付けて自分にやってみたら、「案外やれるもんだな」って(笑)。それを見ていたブラジル人の若者が、「俺にもやってくれ! 」って言って来て。そいつが「背中にトラを描いてくれ」って言うもんだから、「この道具じゃできない、機械を使わないと。聞いた話だと、ラジカセやボールペンを改造して代用できるらしいぞ」って教えたら、翌日に必要なモノを全部揃えて持って来ちゃってさ(笑)。作ってやってみたら、できそうかもってくらいだったんだけど、やっぱり無理で。そうなると自分自身も気になるから、プロのいる所に行って、覗いて学んだり教えてもらったりして、徐々にタトゥーの世界に入っていたかな。

ーそれで帰国して、店を始められたんですか?

流れ流れて、何年ぶりかに日本に戻って来て、なんとなく店をやるなら大須かなって事で、28歳の時に松原(大須スケートリンク周辺)の方でアパートを借りてやり始めたのが最初だね。バイカー系やパンク系のショップの人やタトゥーに興味のある人達が話を聞き付けてやってくるんだわ。その頃は、まだタトゥーショップもほとんどない時代だから。いわゆる不良にいちゃん達がアパートにうわーっと集まってくると良くないなぁと思ってさ(笑)。それで、本格的に店舗を構えようと大須をぷらぷらしていたら、今の場所がちょうど貸店舗になっていて、すぐに決まって、それから今までずっと。松原の時は10ヵ月くらいで人が集まる様になったかな。まだ誰も携帯電話持ってない、“移動電話”とか言われてた時代に持ってやってた。

ーその後は順調に浸透していったんですか?

おかげさまでいろんな国からオファーが来るから、いろんな所でいろんなお客さんと出会えている。昔は、雑誌を見て知ってくれたり、海外の雑誌なんかでも紹介されて…エド・ハーディーが雑誌の取材でココに来てくれた事もある。今はネットで情報を入手していたり、あとは、僕の絵を見て、「ぜひ、やってくれ! 」、「最初はSABADOと決めている」っていうお客さんもいる。もちろん、海外からココまで来てくれるお客さんもいるよ。色々と選択肢がある中から、僕を指名して来てくれる。1年くらい前からメールでやり取りして、観光がてら来てくれたりね。今は「誰でも良いからタトゥーやって欲しい」っていうオーダーじゃなくて、「色々と見てきた中でも、SABADOにやって欲しい」っていうお客さんだけしか受け付けていない。僕を選んで来てくれる人を大切にしたい。それに何でも仕事を受けていた時って言うのは、確かにお金の巡りは良くなるんだけど、大切な時間が無くなっちゃう。今はおかげさまで程良く忙しくて、大切な時間もキープできて、ぜいたくな感じ。

ー海外に渡っている事が多いと聞きました。どれくらい向こうで仕事を?

先月はアムステルダム、今月はオーストラリア…そんな感じ。もう24,5カ国くらい行っているかな。海外のタトゥーイベントに呼ばれて行ったりする事が多いかな。イベント3日間の間にやれるだけやっても、せいぜい4,5人。でも、まだまだ僕にやって欲しいと言う人がいるので、そうすると主催者から現地のタトゥーショップに滞在してやってくれと頼まれて、と言った感じで3〜4週間、その国の各地を飛行機で転々として、呼ばれた所に行って、タトゥーをやってくる。

ーなるほど〜バリバリ海外で仕事をしている日本人はカッコイイです! では、SABADOさんを紹介して頂いた吉田さんとはどのようにして知り合われたんですか?

大須の祭りの手伝いをやらないかって言われたのをキッカケに、仲良くさせてもらっている。法被も持っているし、祭りは好きだから意気投合してね。吉田さんの店の階段にある絵画も僕が描いたモノ。ボランティアでやらせてもらいました。気に入ってもらえて嬉しいね。

ーそんな吉田さんからひとつ目の質問で、「自分の絵をタトゥー以外にどう表現したい? 」と頂きました。

今は、タトゥーというだけでなくて、僕、SABADOのアートスタイルを紹介していきたい。だから、ポスターの依頼だったり、バナー広告や看板の依頼、プレゼント用の絵画や車へのペイントもやっている。ずっとタトゥー一本でやってきたんだけど、数年前から、“SABADO”というアーティストとして、いろんな事を活動していきたいっていうのが一番。

ーそれに付随して、将来的な理想や今後のプランも教えて下さい。

まず、僕のポリシーを言うと、先の事は考えない(笑)。せいぜい明日のメシの事くらい(笑)。今決められる事って、今までの経験でしか判断できない。だから、どんな事が起きても大丈夫な様に、常にギアはニュートラル、どんな波が来てもフワッと乗れる様にしとかないと。アーティストは予定を決めない(笑)。だから、今はお金も追い掛けてない。家族に「アーティストとしてやりたい。でも、今みたいに裕福ではなく、貧乏になるかも知れない。それでも良いか? 」って聞いた時も「良いよ! 」ってみんな言ってくれたからさ。キャリア20年だけど、ずっと自分の仕事に納得がいかなくて、ようやく許せる様になったのが15年目。その時にアーティストとしてやっていこうと思った。今は自分のスタイルを押し出して、楽しく仕事ができている。敢えて言うなら、ユニークで誰ともかぶらない、パッと見て、「これ、SABADOだ」って分かるモノを創っていきたい。

ーふたつ目の質問です。「タトゥーアーティスト以外なら何をやっていた? 」

物作りっていう事が好きだから、そっち系、自営業なんだろうな。逆に、組織に勤めるっていうのは窮屈に感じちゃうから、それは無理だろうな。もしバイトするなら、リサイクルショップかな(笑)。ボロいのや壊れたモノをピカピカにする仕事がやってみたいかな。歳とったら、タトゥーとダッチオーブンと柔道着の専門店・リサイクルショップがしたいかな(笑)。

ー吉田さんから最後の質問です。「タトゥーに興味はあるけど、温泉好きだから…SABADOは温泉入りたくないの? 」

温泉行ってるよ〜タトゥーをしてると入れないみたいなのは、都市伝説だね(笑)。例えば、カワイイお姉ちゃんがチラッとタトゥーを入れていても、出て行って下さいとは言わないでしょ。僕だって、一回も言われた事ないよ。その人の考え方ひとつだよ。しっかり前を向いていれば問題ないです(笑)。

ー最後に聞かせて下さい。色鮮やかな作風が特徴的ですけど、どのようにして辿り着いたんですか?

う〜ん、難しいけど、好きなモノを追求していったらこうなっていたっていうのが大きいかな。無理矢理こうして行こうとしてこうなったんではなくて。まぁ、地味より派手な方が好きだって言うのが一番の理由かな。よく「どうやって鮮やかな色を出してるんだ? 」、「一体何色使っているんだ? 」って聞かれるんだけど、インクは6色しか使っていない。量や質じゃないんだよ。自分の考え方、やり方ひとつでうまくできるんだよ。カテゴリーにはまらない、追っかけないスタイルで進みたい。絶えず、草刈り機を持って、道を開拓して進んで行きたい。僕のスタイルを象徴する話で、オーストラリアのお客さん2人がいて、それぞれ面識も無い他人なんだけど、街で偶然お互いを見掛けた時に「そのタトゥー、SABADOだよね? 」、「それって、SABADO!? 」ってお互いに声を掛け合って仲良くなったらしい(笑)。そんな話のメールをそれぞれ2人からもらった時は嬉しかったね。タトゥーは趣味の世界だから、完成して終わりじゃない。完成してから、その人がどうしていくかが楽しい。コミュニケーションツールとしても、「今日は家に置いてきちゃったから見せられない」っていう事がないしね(笑)。