それは、あの中に広がっているのかもしれない。
『イラストレーター/グラフィックデザイナー/作家』鷲尾友公
―イラストレーションをはじめ、グラフィックデザインや写真など、さまざまなアート作品に取り組んでいる鷲尾さん。この道にはどのようにして進まれたのですか?
もともと絵を描くことが好きで、授業中に漫画のキャラを描いたりしているような子供でした。高校もその流れで油絵とか写真とか陶芸とか芸術系の授業のある学校に進み、卒業後、大学に入ろうとしたのですが浪人しても入れなくて。正直、本当に大学に行きたかったかというとそうでもなくて、ただ、自分の進路を決めたくなかったんですよね。なので、そんなに受験に向けての準備もそんなにしなかったし、クラブに通うようになり、バイク事故で骨折するし(笑)。
そんな感じで将来に対して足踏みをしていたのですが、それを見かねた高校時代の担任が造形業の会社(以下A社)を紹介してくれたのです。せっかくだし、僕はA社で社員ではなくバイトとして働くことにしました。主に携わっていたのは、発泡スチロールを削って色んなものをつくり、それをペイントする仕事。約4年間、ここにはお世話になりました。
―なぜ、その仕事を辞めたのですか?
交通事故をきっかけに「自分で何かをやろう」と思うようになったからです。その気持ちが強くなったのは、A社で知り合った先輩からの影響が大きかった。その人も作家で、先輩との会話や姿勢などからたくさんの刺激を受けました。また、A社でバイトしていた当時の僕は、仕事よりも、クラブに遊びに行くことの方が自分の日常において大切なことでした。そんな日々の中でたくさんの人たちとの出会いを通じて、フライヤーとかポスターとかのデザインを依頼される機会が増えていって…。
―いざ独立、実際どうでしたか?
いつか絵描きに専念できるよう、日雇いのバイトしながらつないでいきました。そんな中、浪人時代からの友人が音楽レーベルの仕事をはじめたことがきっかけで、CDジャケットやWebのデザインをしたり、写真を撮ったり、ビデオを作ったりするようになって。ほぼ、音楽が一番近くにある生活でしたね。それらの日々は充実していたのですが、4~5年もすると音楽業界の流れに変化が起きはじめ、そして次第に人間関係にも変化が生じてきて…。もっと「自分の表現」を「やる」ように本腰を入れることにしました。
―自分自身の行く先を模索していた当時、鷲尾さん今振り返って「プラスになった」と感じる自分自身の行動は何ですか?
意識的に会いたい先輩と会い、色んな話を聞いたことは大きかったと思います。特に『SPANKY』の城宝さんと『TFL』の武山さん、税理士の大井さんとか、主に僕よりも先輩の人たちですね、その方たちから聞いた話は印象深く残っています。
―アーティストとして本格的に活動をはじめてから数年、自身のテーマとしていることは何ですか?
絵を描いたり、粘土で造形したり、写真を撮ったり、何にするにせよ、僕は「つくりたいものをつくる」。それだけです。ただ、その軸は変わらないのですが、生活のリズムや住む場所の変化などで、生み出せるものは変わってきますけどね。今年のテーマは「人」なのかも。ちなみにですが、今住んでいる部屋も友人と改装しながら作りました。
―ところで、前回の青木さんとの関係は?
僕にとって青木さんは、大げさに言えば、恩人です。以前から仕事を通じてお世話になっているのですが、僕が「描けない」状況だったとき、青木さんとの会話で僕は救われました。
―どのような言葉が鷲尾さんには響いたのですか?
ひとつの言葉を選んで「コレだ!」とつまみあげるのは難しいですが、とにかく青木さんは、迷っている僕を褒めてくれたんですよ。肩の力が抜けていく感覚というか、それがありがたかったです。以来、青木さんの会社でドローイングをしたり、週3ペースで飲みに行くこともありました。でも、でら長いんですよね、青木さんと飲みに行くと(笑)。
―ではここらで、そんな青木さんからの質問を!ひとつめ「無性に絵が描きたくなるときはありますか? もしあれば、それはどんなときですか?」
人といるときかな。その場とは全然関係のない絵を描きたくなることが結構多くて、会話をしている最中でもいきなり絵を描きだしてしまい、よく「話聞いてないんじゃない?」とか言われるんだけど、聞いてます。でも、絵は唐突に、描きたくなるんですよ。電車の中でもお酒を飲んでいるときにでも。
―鷲尾さんにとって「絵」とは何ですか?
生活そのものです。
―ふたつめの質問「何をしている時がいちばん「幸せだなー」と思いますか?
ん〜、何かを待っている時、飛行機を待っている時、映画に行くと決めてから映画がはじまるまでの間とかに幸せを感じます。子供の頃、オトンに電車にのってグーニーズを観に連れて行ってもらったあの遠足のような日を待ちわびていた時みたいな気持ちですね。好きな映画は戦争ものとかSFやゾンビもので、思わず声をあげて観た作品は「グリーン・インフェルノ」でしたね。だいたいの映画は途中で眠くなっちゃうんですけど、面白くないからじゃなくて集中していると…つい…。この映画を観たときは寝なかった。…いや、違うな、僕が心から「幸せだなー」と思うのは。絵を描いているとき?全然幸せじゃないですよ。そのときあるのは感謝の気持ちだけなので。
―ラストの質問「作家として今後どうなっていきたいですか?イメージを聞かせてください!」
今までは何を描きたいかを模索してきましたが、ようやく最近それが見えてきました。新しくなった自分を表現できるよう、環境を整え、色んな活動に取り組み、もっと場数を踏んで、もっと絵を描いて、みんなをビックリさせるような作品を生み出していきたいです。
プロフィール
『イラストレーター/グラフィックデザイナー/作家』
鷲尾友公
イラスト・写真・粘土など、あらゆる媒体を介して独自の感性を表現する作家。小さなグッズから巨大壁画まで、その作品展開は多岐に渡る。1977年生まれ、愛西市出身。
Q. 38歳のとき何してました?
Q. まだまだ大人になりきれないな。って思うことあります?
Q. ずいぶんと昔話だけど、ドイツ楽しかったですね。お酒まだやめてます?