土井沙織
今回のゲストは大須公園の目の前にある珈琲店『支留比亜』の服部さん。よろしくお願いします!

服部さん
こちらこそ。

土井沙織
支留比亜さんといえば名古屋市をはじめ各地で展開する珈琲店として知られていますが、こちらの支留比亜さんって、かなり年季が入っていますね!

服部さん
ええ、うちの店はもう今はフランチャイズじゃありませんが、開店したのは今から34年前です。当初の大須は寂しいものでしたよ。今では想像できないようなシャッター街でしたから。傘屋さんとか下駄屋さんとかの個人店がほとんどで、街を歩いているのはお年寄りの方ばかりでした。こっちに来たばかりの頃は、町人祭とかにも積極的に参加するなど、街に馴染んでいくよう努力したものです。また、ひとりでも多くのお客さんに喜んでもらい、また店に来ていただけるよう、徹底したサービスにこだわりました。その甲斐あって、今でも多くの常連さんが通ってくださって続けられています。

土井沙織
すごいですね!

服部さん
とはいえ、ちゃんと仕事に本腰を入れたのは50歳ぐらいからですけどね(笑)。それまでは芝居優先でした(笑)。でも、子供たちを養っていかなくてはいならないし、このままではいかんなと。

土井沙織
芝居?

服部さん
ええ、支留比亜で働く前は東京に居て、役者をしていました。

土井沙織
東京で?役者を?

服部さん
はい。

土井沙織
どんなキッカケで役者をはじめたのですか?

服部さん
経緯を簡単に話しますね。僕はかつて名古屋の北区にあった遊郭の中で生まれました。親父が女郎屋を2軒経営していて、いわゆる坊ちゃんとして育ったわけです。が、その親父が飲む打つ買うでね、博打で破産してしまいまして、犬山の方に引っ越したんです。それから、牛乳配達のバイトをしながら学費を稼いで、23歳のとき、声優に憧れて家出同然で東京に行きました。念願の声優学校に入ったのですが、そこで知り合いを通じて、とある芝居を手伝うことになったのです。それで舞台の面白さを知ってしまい、もう声優なんかどうでも良くなっちゃって(笑)。それで28歳のとき、支留比亜を開業した名古屋の親戚から「徳川店をやってくれんか」という話がきて、こっちに戻ってきたわけです。

土井沙織
すごい展開ですね(笑)。東京から戻ってきたときって、後悔はありませんでしたか?

服部さん
ありましたよ(笑)。だけど、よく考えると、それで良かったのかなと思っています。

土井沙織
どうしてですか?

服部さん
カミさんと出会えたからです。名古屋に戻ってきて芝居は辞めていたのですが、一年くらいは真面目に働いていたものの、やっぱりムズムズしてきて、役者としての活動も再開しました。でも、その劇団での活動を通じてカミさんと出会えたので。パタンナーをやっていたんですよ、彼女。ほんと、自分の人生、何が良かったって、カミさんと出会えましたからね。

土井沙織
服部さんからアタックしたのですか?

服部さん
まあ、そうですね(笑)。僕は半分チンピラみたいな男ですが、彼女はすごく愛情深くて、曲がったことが嫌いな誠実な人で。今でも一年一年、恋をしています。

土井沙織
夫婦喧嘩とかしないのですか?

服部さん
しないというより、喧嘩になりませんね。向こうの方がまったくの正解ですから。いつも僕は怒られてばかり(笑)。でも、僕にとってカミさんは一番の宝です・・・・・これってノロケですかね?


土井沙織
はい(笑)。ところで役者としての活動は現在も?

服部さん
いや、今はもう舞台に上がることはありません。その代わりと言ったらおかしいですが、65歳になってから落語をはじめました。知人に一度、落語に連れて行ってもらったんですよ。そこで見たのは一般の人たちによる落語だったのですが、それがすごく上手で、感動しちゃって。

土井沙織
落語のどんなところに魅力を感じたのですか?

服部さん
演劇とは違って、落語はお客さんの目の前に僕という存在が居ながら、何人もの登場人物を演じ分け、噺の中の風景や人物像をお客さんに見せなければならない。所作や声色はもちろん、そのほかにも色々あるんですけど、とにかく、面白いですよ。

土井沙織
奥が深そうですね。

服部さん
時間を見つけては稽古を重ねています。最近は時々、赤門通の『蛙屋』で行われる落語会などでも噺を披露しているので、機会があれば土井さんも一度来てみてください。

土井沙織
はい、是非!それではここらでサチコさんから服部さんへの3つの質問いきます!ひとつめ「喫茶店マスターとして大事にしていること3つを教えてください」

服部さん
絶対に食べ物がおいしくなければならない、飲み物もおいしくなければならない、そして絶対にお客さんを喜ばせなくてはならない。この3つですね。特に大事なのは3つめです。商売とは、入口がふたつあって、「どうやったら儲かるかな」という入り口ではなく、「どうやったらお客さんが喜ぶかな」という入り口から入らなければならないものだと思います。そのためにも僕は、常にアンテナを張ってお客さんにとって本当に価値のあるサービスを追求し、実際に提供し続けてきました。もちろん手間はかかるし、利益率が下がる場合もありますが、お客さんが喜んでいただくことが一番なので。

土井沙織
服部さんの店には、コーヒーのお代わりは何杯飲んでも130円とか日替わりのおやつも120円とか、お客さんにとってうれしいサービスが豊富ですね!ちなみに一番のオススメメニューは?

服部さん
エッグサンドです。とろとろふわふわ玉子でおいしくて、ボリュームもかなりありますよ。

土井沙織
おいしそう!続きましてふたつめの質問「役者人生も長い公さんですが、いつかやってみたい役はありますか?」

服部さん
特にないですね。役者としての自分はもう頭にありませんから。落語でやってみたいのは・・・人情噺かな。人情噺は、すごくシリアスな感情移入が必要で、気持ち悪くなっちゃうんですよ。でもいつかは、できるようになりたいですね。

土井沙織
では、ラストの質問です!「会いたい一心で奥様のご実家までママチャリで行かれたことがあるそうですが、今ならママチャリでどこまで行けそうですか?(笑)」

服部さん
ありましたね、そんなことも(笑)。長女が生まれたとき実家に戻っていたので、もう会いたくて会いたくて、仕事が終わってから名古屋から犬山の入鹿池の奥までママチャリで行きました。行きに右足を、帰りに左足を痛めましたけどね。今でもゆっくりなら奥さんの実家まで行けると思いますよ。ああ、でも、あの坂はキツイからなぁ(笑)。

プロフィール

『支留比亜』服部 公

23歳のとき、声優を目指して上京。その後、役者の道に進み、28歳のとき名古屋に戻る。現在、大須公園の近くにある珈琲店『支留比亜』の経営者を務める。落語家としての一面も。1947年生まれ、名古屋市出身。

次は『佐喜』のさきこさんへ!

服部さんからさきこさんへの質問

Q. おすすめのメニューは?またそのこだわりは?

Q. 多忙の中、家事などしっかりやられていますが、その精神力はどこからくるのですか?

Q. いつもお店の雰囲気が良いですが、普段から気をつけていることはありますか?

この記事のインタビュアー

プロフィール

土井沙織(26歳)

”女性が憧れる女性”をコンセプトに、新しいスタイルの音楽・ファッションアイコン・エンターテイメントに特化し東海から世界に向けて新たなムーブメントを起こすマルチガールズユニット「ISGY」(アイエスジー)のメンバー。YABA COLLECTION 2016にてデビューを飾る。

TALK RELAY

オモシロイ大人をインタビューしていくこの企画

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