自分の好きなものでつながっていく。
『SPANKY』
城宝 賢
―城宝さんが経営するトイショップ『SPANKY』は、オモチャに興味のある人からそうでない人まで、思わず中をのぞきたくなってしまう大須商店街の名物ショップのひとつ!そもそもな話ですが、なぜこのお店を出そうと考えたのですか?
もともと私は「スパイマスター」という東海エリアのカルチャー情報誌の編集者でした。そのとき仕事を通じて、さまざまなジャンルの業界の人と出会い、いろんな店を取材しているうちに、自分の店を持ちたいと思うようになったのです。それで、やっぱり店を出すなら自分の好きなものを扱う店がいいな、ということで1997年に『SPANKY』をオープン。27歳のときでした。大須という場所を選んだのは、先輩に勧められたからです。
―現在『SPANKY』の店内は多種多様なオモチャであふれていますが、オープン当時はどんな感じだったのですか?
あのころ店に並べていたのは、アメリカから仕入れたものばかりでした。私自身、あっちのものが好きだったし、ちょくちょく行っていたので。今でこそ混沌とした商品構成で展開していますが、当時は絵に描いたようなアメトイ主流の店でした。名古屋には他に同様の店がほとんどなく、業界ムーブメントだったこともあり、オープン当初から調子は良かったですよ。
―当時と今、なぜ商品構成が変わってきたのですか?
理由をひと言でいうなら「ニーズの細分化」です。かつてはトイショップに足を運ぶお客さんというといわゆるマニアな方ばかりでしたが、年々、お客さんの層は拡大しているように思えます。かつてはごく少数の人が楽しんでいたはずの趣味が、じわじわと万人にも開放され、誰でも気軽に楽しめるようになってきたというか。この業界は常に動いているので、数年後には今とは違う感じになるでしょうけどね。
―『SPANKY』ならではの特色はどんな部分ですか?
2001年頃から「headlockstudio」という名義でオリジナルトイの制作にも力を入れています。また、直近では「SHELTERBANK」とのコラボで「master ceramics」というブランドを立ち上げて陶器の人形をつくっています。オリジナルトイに関しては、これまで国内はもちろん、香港やアメリカなど海外のショーにもたびたび出展してきました。印象深く残っているのは、2003年に参加した「adidas」主催のエキシビジョンです。先方からオファーが来たときは驚きましたね。
―あの「adidas」から直接お声がかかるってスゴイですね!
そうですね。経緯を簡単に説明すると、その以前、香港のイベントで出展した品をとあるドイツ人が購入してくれて、その人が向こうのスケーター系の雑誌にそれを載せてくれたのです。そのことを知った私は彼にお礼のメールを送って、親交が深まり、結果として「adidas」のショーに招かれた、という流れです。こうやって自分の好きなオモチャを通じて関連する人たちとつながったり、海外をまわったりできるのは、この仕事ならではの面白いところだと思います。ちなみにあのときドイツに一緒に行ったのは鷲尾君です。
―城宝さんから見て、鷲尾さんはどんな人ですか?
10数年前に鷲尾君の絵を見て、一緒にフィギュアをつくって以来の付き合いになりますが、彼は自由人ですね。自分の感性や価値観をマイペースで貫いている、そんなイメージです。
―そうなんですね!ではここらで、鷲尾さんから城宝さんへの3つの質問!ひとつめ「38歳のとき何してました?」
38歳というと、今の鷲尾君と同じ年のときの自分か…。そうですね、あの頃はしょっちゅう錦で飲んでいました(笑)。週に4~5回のペースで。別にオネエチャンが好きなわけではありませんでしたが、仕事や同級生との付き合いでよく遊びに行っていましたね。最近?全然行っていないですよ。
―週に4~5回って、ほぼ毎日ですね(笑)。続いてふたつめ!「まだまだ大人になりきれないな。って思うことありますか?」
もちろんありますよ。20代の頃は50歳でリタイヤしたいと思っていましたからね。あんまり長いあいだ働きたくなかったんですよ。でも、長年やっているうちに自分の考え方が変わってきて…まだ現役です(笑)。大人になりきれないなと感じるのは、ずっと前からそうなんですけど、私は結構、好き嫌いがハッキリしているので。「もっとバランス良くやれたらいいな」とか「ちょっと大人げなかったかな」と思う場面は多々あります(笑)。
―ではラストの質問!「ずいぶん昔話だけど、ドイツ楽しかったですね。お酒まだやめてます?」
たしかに、あのドイツは良かった。「adidas」のエキシビジョン自体は、契約書が全部英語で書かれていたり、こと細かい決まりごとがあったりして大変でしたが、とても実のある経験でした。酒を飲んで道路で寝ちゃったりもしましたが(笑)。あれに懲りてじゃないけど、今はほとんど酒を飲みません。もともとそんなに好きじゃなかったので。飲むとしても、同窓会とか特別な機会だけです。ストレス解消?最近は休みの日に子供と一緒に自転車で出かけるのが一番癒されますね。
プロフィール
『SPANKY』
城宝 賢
情報誌の編集者として働いた後、27歳で独立。大須商店街の万松寺通にある人気トイショップ『SPANKY』のオーナー。店舗経営のみならず、オリジナルトイの制作にも精力的に取り組む。1969年生まれ、春日井市出身。
Q.これまで一緒にいろんな国に行きましたが、何が一番楽しかったですか?
Q.来年アメリカへ行こうと思ってるけど、一緒に行きますか?
Q. 今後の展望を教えてください。